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ニュージーランドワイン|主要生産地や主要品種まで徹底解説

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旧世界のワイン生産国の中でも特に頭ひとつ飛び抜けているのが、南半球の島国であるニュージーランド。そこで造られるワインは世界中のワイン愛好家の肥えた舌を唸らし続けています。

その独自のテロワールや革新的な醸造技術、そして何よりもその素晴らしい品質により、ニュージーランド産ワインはグローバルな市場で確固たる地位を築いています。

本記事では、ワイン業界の新たな魅力を生み出し続けるニュージーランドワインの歴史からその特徴、気候条件、主要なブドウ品種、そして著名なワイン生産地や生産者までを詳しく紹介していきます。

この国がなぜここまで有名なワイン大国になったのか、その変遷を解き明かしていきます。

この記事の監修者 佐々木 健太

年間受講者数日本一を誇るワインスクール講師。21歳でソムリエ資格を取得。南フランスにある一つ星レストラン「Keisuke Matsushima」にて研鑽を積み、帰国後は南青山「L’AS」を経て、株式会社WINE TRAILを創業。第9回全日本最優秀ソムリエコンクールファイナリスト。
現在はワイン初心者でもワインを楽しめるよう小瓶ワインのサブスク「Homewine(ホームワイン)」を初め、会員3,000人を誇る。

ニュージーランドワインの歴史

初期の歴史

南大西洋に浮かぶワイン大国の歴史は、19世紀初頭に遡ります。最初にブドウが植えられたのは1819年で、宣教師サミュエル・マースデンが北島のノースランドにブドウの苗を持ち込んだことに始まります。

彼の取り組みはニュージーランドのワイン産業の誕生を告げたと語り継がれており、宣教師たちによって国内各地にブドウ畑が普及していきました。

19世紀後半の発展

19世紀後半には、オーストラリアから移住してきたジェームズ・バズビーが、現在のワイヘケ島やオークランド周辺でブドウ栽培を行い、ワイン生産の基礎を築きました。

また、ダルマチア(現クロアチア)からの入植者たちがゴム掘りとともにブドウ栽培を始め、ニュージーランドのワイン産業に多大な貢献しています。

20世紀の苦難と革新

20世紀初頭にはフィロキセラの流行や世界大戦の影響で、ワイン産業は一時的に停滞します。しかし、1970年代に入ると、マールボロ地区を中心に新たなワイン生産地が開発され、特にこの地方のソーヴィニヨン・ブランが国際的に高い評価を受けました。

このマールボロ地区の成功を皮切りに、ニュージーランドワインは世界的評価を一度に集め、瞬く間にワイン大国として急速に発展を遂げたのがこの国なのです。

近年の発展と未来

近年では、ニュージーランドのワイン産業は品質と多様性で国際的に認知されるようになり、特にピノ・ノワールやシャルドネといった品種が、冷涼気候の恩恵を受けて高品質なワインを生み出し始めています。

また、スクリューキャップの導入やオーガニック栽培、サステイナブル農法など、最新の醸造技術と環境配慮型の取り組みも積極的に取り入れていることから、挑戦と革新の連続を今もなお起こし続けているソムリエ注目のワイン生産国です。

ニュージーランドのテロワール

ニュージーランドワインが世界的に有名になった背景には、この国の「気候」があります。

まず、この国は全土にわたって温暖な西岸海洋性気候が広がっています。太平洋に囲まれた島国であるため、気温が比較的安定しており、極端な暑さや寒さが少ない気候特徴を持っています。

しかしこの太平洋に優雅に浮かぶ島国は「北島」と「南島」の2つに大きく分かれており、それぞれのエリアで気候帯が若干異なります。

この章ではニュージーランド全体の気候特性を紐解いていきます。

西岸海洋性気候の北島と半大陸性気候の南島

ニュージーランドは南緯40度付近を流れる西風の影響を受け、国全体としては冷涼な気候を持っています。

その中でもオークランドやホークス・ベイを有する北島は温暖な海洋性気候が比較的優勢で、降水量が比較的多く、ブドウの成長に適しています。

一方、マールボロやセントラル・オタゴを有する南島の一部地域では半大陸性気候が見られ、乾燥した夏と寒冷な冬が特徴です。これにより、ブドウの成熟が遅れ、複雑な風味を持つワインが生産されます。

冷涼気候と乾燥気候を有する南島のポテンシャル

特にセントラル・オタゴやカンタベリーなどの南島の地域は乾燥した冷涼気候区分に属しており夜間の温度が低く、昼夜の寒暖差が大きいことで有名です。

この気候はサザンアルプスというニュージーランドの南島を縦断する山脈が西からの湿った風を遮り比較的降水量が少なく日照時間が長い乾燥した気候をもたらしていることに起因しています。

この温度差がブドウの酸味を保ち、フレッシュな酸味とエレガントなスタイルのワインを生み出せる要因となっています。

多彩な土壌環境がワインの独自キャラクターを造る

また南島の一部地域では、氷河が退縮した後に残された土壌が見られ、火山性の土壌やグレーワッキ(堆積岩)など、多様な土壌で形成されています。これらの土壌は水捌けが良く、ブドウの根が深くまで伸びることができます。その結果、地中から豊富なミネラルを実にもたらし複雑な風味を持つワインへと進化させます。

ニュージーランドの主要ブドウ品種

ニュージーランドは、その多様な地形と気候条件により、さまざまなブドウ品種を栽培しています。この章では、この国全体で栽培される主要なブドウ品種について詳しく深ぼっていきます。

ソーヴィニヨン・ブラン

ニュージーランドといってまず最初に抑えなければならないのがソーヴィニヨン・ブラン。世界三大ソーヴィニヨン・ブラン産地の一つと数えられておりトップクラスの品質を誇ります。

特にマールボロ地区は、この品種の一大産地として知られており、独特のトロピカルフルーツやグレープフルーツ、青草やハーブの香りが特徴香です。

ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは、そのクリスピーな酸とフレッシュな味わいも評価されており、国際的なワインコンペティションでも数々の賞を受賞しています。

ピノ・ノワール

ここ最近注目され始めているのがニュージーランドの冷涼気候に適した赤ワイン品種であるピノ・ノワールです。最南端のセントラル・オタゴやワイララパ、南島北部のマールボロ地区などが主要産地となっています。

ニュージーランド産のピノ・ノワールは、チェリーやラズベリーのフレッシュな果実味に加え、柔らかなタンニンが特徴的です。特にセントラル・オタゴのピノ・ノワールは、その品質の高さで知られており、そのエレガントなスタイルが旧世界代表のフランスのブルゴーニュに肩を並べられるほどどされています。

ピノ・グリ

ピノ・グリも、ニュージーランドの白ワイン品種の一つで、特にネルソンやマールボロでの栽培が有名です。トロピカルフルーツやハーブのアロマ香が特徴で、果実味豊かな厚みのあるワインに仕上げています。まさに酸とフルーティさの調和が取れているのがニュージーランド産ピノ・グリの特徴と言えます。

リースリング

リースリングは、冷涼気候を好む白ワイン品種で、カンタベリーやセントラル・オタゴなどの地域で栽培されています。ニュージーランドのリースリングは、そのフレッシュな酸味とエレガントなスタイルが特徴です。

メルローとシラー

赤ワイン品種のメルローとシラーも、一部エリアで栽培されています。ホークス・ベイやギムレット・グラヴェルズなどの温暖な地域での栽培が有名で、熟した赤系果実やスパイスの風味を持つフルボディのワインを造っています。

ニュージーランドワインの特徴

恵まれた大地の恩恵を受けるニュージーランドワインですが、その評価はフランスやイタリアをも脅かすほどでもあります。テロワール由来の独特な特徴や最新の醸造技術を駆使して造り上げるワインは、初めてこの国のワインを口にする人の多くを虜にしています。

高品質なワインと多数のスタイル

ニュージーランドは、冷涼気候と豊富な日照時間によって、高品質なワインを多数生産しています。実はこの国のブドウ畑は、紫外線の影響を受けやすい位置にあり、ブドウの成熟が早いことから、果実味とクリスピーな酸味を持っています。

また、多様なスタイルも持ち合わせており、辛口ワインからフルーティで厚みのあるワインまで、さまざまなワインが生産されています。白ワインは、クリスピーな酸とフレッシュな味わいがあり、赤ワインは、ジューシーな果実味とエレガントさが際立ちます。

スクリューキャップの導入

ニュージーランドは最先端の醸造技術を積極的に取り入れる動きがあり、伝統的なコルクを使用した際のワインの風味劣化を防ぐべくスクリューキャップの採用を積極的に推進しました。

2001年には、ニュージーランドのワイナリー「クーパーズ・クリーク」が最初にスクリューキャップを導入し、その後多くのワイナリーが追随しました。

この新スタイルのキャップはリサイクル可能なアルミニウムで作られており、適切なリサイクルシステムを利用することで環境への影響を最小限に抑えることができるため、従来のコルク林を使用して製造する際の森林負荷を減らすことができます。

環境に配慮したサステイナブル農法

国全体で自然環境への配慮の意識が生まれているニュージーランドのワイン生産者の多くは、オーガニック栽培やサステイナブル農法を広く取り入れています。自然派ワインや亜硫酸無添加のワインなど自然を大切にしたワインを楽しむためにはまさにニュージーランド産のワインが適していると言えるでしょう。

ニュージーランドの主要ワイン生産地

ニュージーランドは、その独特な地形と気候条件により、多様なワインを生産することで知られています。

また各ワイン産地の品質を保証するために地理的表示保護(GI)を導入しており、各地域の独自性を尊重した、高品質なワインを生み出し続けています。

まさに目が離せないニュージーランドの主要産地とその特徴をこの章でまとめていきます。

マールボロ地区

マールボロ地区は、ニュージーランド最大のワイン生産地であり、特にソーヴィニヨン・ブランの栽培で世界的に有名です。この地域は、豊富な日照量と冷涼な海洋性気候に恵まれ、フレッシュでクリスピーな酸味を持つワインの製造を得意としています。

マールボロ産ソーヴィニヨン・ブランは、フランスのボルドーやロワール産のものと比較してトロピカルフルーツなどの柑橘系の香りが強く、ハーブの香りが特徴的です。主要なブドウ畑は、ウイラウ地区とアワテレ・バレーに集中しています。

ホークス・ベイ

ホークス・ベイは、ニュージーランドの北島東部に位置し、温暖な気候と多様な土壌条件が特徴です。この地域は、ボルドーブレンドの赤ワイン、特にメルローやシラーの生産が盛んで、ギムレット・グラヴェルズ・ディストリクトが特に有名です。ここでは、果実味豊かでスパイシーなワインが生産され、砂利質土壌がブドウに独特のミネラル感を与えている特徴があります。

セントラル・オタゴ

セントラル・オタゴは、ニュージーランド南島の内陸部に位置し、世界で最も南にあるワイン生産地域の一つです。冷涼気候と長い日照時間を有しているため、ピノ・ノワールの生産に適した場所として人気が出ています。

セントラル・オタゴ産ピノ・ノワールは、チェリーやラズベリーのアロマとエレガントなスタイルが特徴で、ピノ・ノワール原産国であるフランスのブルゴーニュと肩を並べるくらいの勢いを持っているため世界の多くのワイン評論家が注目しています。

ワイララパ

ワイララパは、北島の南端に位置し、冷涼な気候と多様なテロワールに恵まれたエリアです。特にマーティンボロー・ヴィンヤードでは、ピノ・ノワールやソーヴィニヨン・ブランを主要品種とし、そこから造られるワインはフレッシュな酸味と豊かな果実味を持つエレガントなスタイルが評価されています。

カンタベリーとワイパラ地区

カンタベリーワイパラ地区は、南島の東部に位置し、海からの冷気と多彩な土壌が特徴です。この地域では、リースリングやピノ・ノワール、シャルドネが主に生産されており、特にワイパラ地区はその質の高さで知られています。カンタベリーのワインは、フレッシュな酸味とミネラル感が特徴で、アロマティックな品種が多く生産されています。

ネルソン

ネルソンは、南島の北西部に位置し、温暖な海洋性気候と高い日照量が特徴です。この地域では、シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールが生産されており、特にサニー・ネルソンの愛称で親しまれています。ネルソンのワインは、フルーティでバランスの取れた味わいが特徴です。

まとめ

ニュージーランドワインの魅力は、その多様性と品質の高さにあります。ニュージーランドワインの歴史は比較的短いものの、その発展と革新は目覚ましいものがありました。冷涼な気候と豊かなテロワールに恵まれた太平洋に浮かぶワインの楽園は、ソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールを中心に世界的評価を集め続けています。

マールボロやセントラル・オタゴなどの代表産地をはじめ、世界のワイン市場に頭角を現し始めているこの国の今後に注目です。

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