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スペイン ワイン - リオハをはじめとした銘醸地と多様なワインスタイル

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スペインは、生産量、輸出量とも常に世界トップスリーに入る、大ワイン生産国です。

多様な気候と、独自の品種が生み出す個性豊かなワインは、世界中を魅了し続けています。

スペインでは、銘醸地として知られるリオハやプリオラートの赤ワイン、発泡性ワインのカヴァ、そして世界三大酒精強化ワインの一つであるシェリーまで、様々なスタイルのワインが生み出されています。

本記事では、スペインワインの魅力について探求していきましょう。

世界最大級の栽培面積と出荷量

スペインは、世界一のワイン用ブドウの栽培面積を誇り、EU域内のブドウ畑の約30%があります。

なかでもカスティーリャ・ラ・マンチャ州は、世界最大のブドウ栽培地域として知られ、スペイン全体の栽培面積の約半分を占めています。

そして、その生産量と輸出量も膨大で、フランス、イタリアとともに、常に世界トップスリーに入る規模です。

スペインワインの特徴と魅力

スペインワインの特徴

スペインは、長いワイン造りの伝統を持つ国です。

そして、多様な気候と地形に恵まれ、歴史に培われた醸造技術により、多くの個性豊かなワインを生み出しています。

本章では、スペインワインの特徴と魅力について詳しく見ていきましょう。

多様な気候と地形がもたらす個性

スペインは、イベリア半島の大半を占めており、地中海と大西洋の両方に面しています。

また、国土の平均標高が600m以上にも達し、ヨーロッパの中でスイスに次いで山脈が多い国です。

この地形的特徴により、西側の沿岸部は海洋性気候、内陸部は大陸性気候、東側の沿岸部は地中海性気候と多様な気候区分を持ちます。

土壌も様々で、アンダルシア地方の石灰質土壌、プリオラートのスレート土壌、ラ・マンチャの赤い粘土質など、地域により大きく異なります。

この多様性により、スペイン各地で、様々なブドウ品種で幅広いスタイルのワインが生まれます。 

伝統と革新

スペインワインの大きな特徴は、伝統の礎のうえで新しい挑戦が続いていることです。

たとえば、リオハでは1990年代から、伝統的なアメリカンオークでの長期熟成を行わない新しいスタイルのワイン造りが始まりました。

収量を抑えて厳選したブドウからしっかりとタンニンを抽出し、フレンチオークの新樽で熟成させることで、ドライフルーツやきのこ、ヴァニラなどの樽熟成の香りが際立つワインを生み出しました。

オハでは、2018年から栽培地の範囲に応じた新たな規制を導入し、テロワールの表現を重視する生産者を後押ししています。

この新しい制度では、3つの階層が設けられました。

ヴィノ・デ・ゾーナ(Vino de Zona):リオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・オリエンタルの3つのサブリージョンをラベルに表示できる。

ヴィノ・デ・プエブロ(Vino de Pueblo):144の村の名前をラベルに表示できる。

ヴィニェド・シングラー(Viñedo Singular):最も細かい区分で、35年以上の樹齢の単一畑の名前をラベルに表示できる。

このように、より細かく区分することで、リオハの生産者は土地の味わいの違いを表現できるようになりました。

このように、長いワイン造りの伝統に加え、新しい技術や手法を積極的に取り入れることで、スペインワインは世界市場で高い評価を得ているのです。

多彩なワインのスタイル

スペインは、世界三大酒精強化ワインの一つであるシェリーの生産地として有名です。

シェリーは、アンダルシア州カディス県のヘレス・デ・ラ・フロンテラで造られる伝統的な酒精強化ワインです。

高いアルコール度数により品質が安定しているシェリーは、1500年代から大航海時代に重要な輸出品として知られ、特にイギリスへの輸出で有名になりました。

白ワインにアルコール度数が95%以上の濃度である蒸留酒を加えて酒精強化したのち、ソレラ・システムと呼ばれる独特の仕組みで熟成します。

シェリーには熟成の仕方が2種類あります。 

一つは酵母の膜の下で熟成するため淡い色でシャープな香りのワインになる生物学的熟成です。 

もうひとつは、空気に触れながら熟成するため、濃い色で複雑かつ凝縮した香りのワインになる酸化熟成です。
そして、パロミノ*から造られる辛口のもの、ペドロ・ヒメネス*を加えて甘口にしたものなど、様々なスタイルがあります。

また、白ブドウ品種であるマカベオやチャレッロ、パレリャーダなどから、瓶内二次発酵方式で造られた発泡性ワインのカヴァも有名です。

カヴァは、スペインのほぼ全域で造ることができますが、カタルーニャ地方の銘醸地、ペネデスのものが特に有名です。

*パロミノ:スペインの酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)であるシェリーの原料として主に使われる白ブドウ品種

*ペドロ・ヒメネス:単体そのものだと、香りは強くないニュートラルな白ブドウ品種

コストパフォーマンスの高さ

スペインは、比較的安価な地価と、より暖かく平坦な地域で栽培できるブドウの生産コストが低いため、高品質なワインでも、フランスやイタリアに比べて安価に流通しています。

また、例えばカヴァは、大手生産者のフルシネとコドルニウが国内生産量の4分の3を占めるなど、大規模な生産体制も生産コストを引き下げています。

スペインは独自の品種も多く、様々なスタイルで造られるワインがありますが、新しいワインに挑戦するにあたって、価格面の敷居が低いことも、スペインワインの魅力の一つです。

スペインワインの歴史と発展 

スペインでのワイン造りは、紀元前から始まって以来、長い歴史を持ちます。

以来、数々の歴史的変遷を経て、現代では魅力的なワイン産地として世界的な評価を得ています。

本章では、スペインワインの歴史と発展について探求します。

スペインワインの過去

スペインでのワイン造りは、紀元前1100年頃に、フェニキア人がもたらしたと考えられています。

そしてローマ帝国がイベリア半島を征服した時代には、ワイン産業は既に確立され、ヨーロッパ全域に輸出されていました。

しかし、8世紀初頭のムーア人の侵攻により、ワイン造りは低迷します。

その後、レコンキスタ(国土回復運動)により、修道院を中心にワイン造りが復興します。

15世紀末に大航海時代が幕開けると、シェリーを中心としたワインの輸出産業が発展しました。

そして19世紀後半、フランスでフィロキセラ禍が発生した際には、多くのフランス人醸造家がスペインに移住し、高度な醸造技術をもたらしました。

現代のスペインワイン産業の状況

1986年のEU加盟を機に、スペインのワイン産業は大きく発展しました。

EUからの補助金により醸造設備が近代化され、品質が飛躍的に向上し、リオハやプリオラートなどの伝統的な産地に加え、新興産地からも高品質なワインが生まれています。

現在では、世界最大級のブドウの栽培面積や、ワインの生産量、輸出量を誇っています。

スペインのワイン法

スペインワインの格付けは、EU加盟後の1986年以降に整備され、現在では厳格な基準のもと、品質の保証と地域の伝統の維持に貢献しています。特に熟成に関する規定は、スペインワインの大きな特徴となっています。

原産地呼称保護制度

DO(原産地呼称保護)には70の地域が認定され、スペインの高級ワインの中核を形成しています。

各地域に設置された原産地呼称統制委員会が、最大収量、使用ブドウ品種、醸造方法などを厳格に管理しています。

そして、原産地呼称制度最高位の特選原産地呼称(DOCa / DOQ)は、現在リオハ(1991年認定)とプリオラート(2009年認定)の2地域のみが認定されています。

DOワインとして10年以上の実績があり、さらに厳格な品質基準を満たした地域のみが昇格できる特別な制度です。

特選原産地呼称は、DOワインとして10年以上の実績があり、さらに厳格な品質基準を満たした地域のみが昇格できる特別な制度です。

樽熟成規定

スペインには、DOワイン全般に適用される独特の熟成規定があります。

具体的には、以下のような熟成期間が規定され、330L以下の樽を使用しなければなりません。

  • クリアンサ
    赤は総熟成24か月以上(うち樽熟成6か月以上)
    白・ロゼは総熟成18か月以上(うち樽熟成6か月以上)
  • レセルバ
    赤は総熟成36か月以上(うち樽熟成12か月以上)
    白・ロゼは総熟成24か月以上(うち樽熟成6か月以上)
  • グラン・レセルバ
    赤は総熟成60か月以上(うち樽熟成18か月以上)
    白・ロゼは総熟成48か月以上(うち樽熟成6か月以上)

なお、リオハのように、各地域でこれより厳しい規定を定めている場合もあり、そうでなくとも、規定の最低熟成期間より長い熟成期間を選択している生産者も多いです。

スペインの主要ワイン産地

スペイン 主要産地

スペインには多様な気候と地形を活かした個性豊かなワイン産地が点在しています。

特に、特選原産地呼称(DOCa / DOQ)を持つリオハとプリオラートを筆頭に、それぞれの地域で特徴的なワインが造られています。

本章では、スペインの主要ワイン産地について詳しく見ていきましょう。

リアス・バイシャス

スペイン北西部のガリシア地方に位置します。

大西洋に面しており、温暖な夏と穏やかな冬を持つ海洋性気候です。

年間を通じて雨がちですが、水捌けの良い土壌や、パーゴラと呼ばれる棚仕立てが、年ごとの品質のばらつきを抑えています。

赤ワインも造られていますが、ほとんどが白ワインで、アルバリーニョから造られるものが有名です。

代表的な生産者は、パソ・デ・セニョランス、パラシオ・デ・フェフィニャネスなどです。

リベラ・デル・デュエロ

ドゥエロ川上流の谷間にあるカスティーリャ・イ・レオン州の産地です。

ブドウ畑のある高い標高が年間を通じて涼しい夜をもたらし、ブドウは酸と新鮮な果実の風味を保ちます。

この産地ではティント・フィノと呼ばれるテンプラニーリョが主要品種で、フルボディの赤ワインが造られています。

代表的な生産者は、ベガ・シシリア、ドミニオ・デ・ピングスなどで、特にベガ・シシリアの「ウニコ」は、スペインを代表する最高級ワインとして知られています。

リオハ

スペイン北部のエブロ川流域に位置し、ラ・リオハ州、バスク州、ナバーラ州にまたがる最古の銘醸地で、1991年に初めて特選原産地呼称(DOCa)に認定されました。

上流から、リオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・オリエンタルの3つの地区に分かれており、下流のリオハ・オリエンタルでは地中海性気候の影響を受けます。

造られているのはほとんどが赤ワインで、テンプラニーリョやガルナッチャが単一品種やブレンドで使用されます。

代表的な生産者は、マルケス・デ・リスカル、マルケス・デ・ムリエタ、ロペス・デ・エレディアなどです。

プリオラート

スペイン北東部のカタルーニャ州の斜面に位置する温暖な大陸性気候を持つ産地です。

2009年に特選原産地呼称に認定された産地で、ここでは、カタルーニャ語のDOQをカテゴリーの略称として使用しています。

夏は暑く長く、年間降水量も少ないので乾燥していますが、リコレーリャと呼ばれるスレート土壌の保水力が高く、生育期を通じて十分な水を保持できます。

主要な品種は、暑い日や乾燥した気候に適している、ガルナッチャとカリニェナで、これらのブレンドや他の国際品種をブレンドしたワインが生産されています。

代表的な生産者は、アルバロ・パラシオス、クロス・エラスムスなどです。

その他の注目産地

その他、ベルデホによるライトな白ワインのルエダや、トロはテンプラニーリョによる力強い赤ワインのトロ、各地で特徴的なワインが造られています。

また、アンダルシア地方のシェリーや、カタルーニャ地方のペネデスのカヴァも有名です。

スペインの代表的なブドウ品種

スペインには多くの固有品種があり、それぞれの地域の気候や土壌に適応した個性豊かなワインを生み出しています。

特にテンプラニーリョとガルナッチャは代表的な黒ブドウ品種として、アルバリーニョは代表的な白ブドウ品種として、それぞれ世界的に高い評価を得ています。

これらの品種は、スペインワインの多様性と品質の高さを象徴する存在です。

本章では、スペインワインに使用されている代表的なブドウ品種について解説します。

テンプラニーリョ

スペインを代表する黒ブドウ品種であり、国内で最も多くの栽培面積を誇ります。

その名は、スペイン語の「早熟」という言葉に由来しています。

国内各地で栽培されており、ラ・マンチャではセンシベル、リベラ・デル・ドゥエロではティント・フィノなど、地域ごとに多くのシノニム(同物異名)を持ちます。

ラズベリーなどの赤系果実やブラックプラムなどの黒系果実の風味と、中程度から高いレベルのタンニンと酸味を持つワインとなります。

若いうちは華やかな果実味を感じさせ、熟成によってバニラやなめし皮、タバコのような複雑な風味が現れます。

オーク樽での熟成にも向き、ワインにヴァニラやスモークなどの複雑性が加わります。

そして、最上のワインは、瓶詰め後も熟成ができ、皮革やドライフルーツなどの熟成香がもたらされます。

ガルナッチャなどとブレンドされることもありますが、単一品種のワインとしても造られます。

【おすすめワイン】

①ラ・リオハ・アルタ ヴィーニャ・アルベルディ レゼルヴァ
リオハで100年以上続く生産者によるクラシックなタイプです。

②マルケス・デ・ムリエタ カスティーリョ・イガイ・グラン・レゼルヴァ・エスペシャル
リオハ最古の生産者による最上の1本です。

ガルナッチャ

アラゴン州原産の黒ブドウ品種で、フランスでは、グルナッシュと呼ばれます。

干ばつに強く、晩熟で、温暖から高温の地域で栽培されます。

熟したイチゴやレッドプラムなどの赤系果実の風味に加え、スパイシーな香りが特徴で、タンニンが少なく酸味が穏やかです。

糖度が高くなる傾向から、アルコール度数が高いワインになりやすい性質を持ちます。

プリオラートでは、古樹から収穫されたものが、凝縮感のある味わいのワインになります。

また、ロゼワインに使用されることもあります。

【おすすめワイン】

①クネ コンティノ・ガルナッチャ
黒コショウのようなスパイシーな刺激とレッドチェリーの果実味が特徴で、樽熟成による複雑さも加わったワインです。

②アルバロ・パラシオス レルミタ
プリオラートの急斜面で造られる凝縮感のある味わいで、古樹から造られる希少なワインです。

アルバリーニョ

スペイン北西部のリアス・バイシャス地域を代表する白ブドウ品種で、ポルトガルではアルヴァリーニョと呼ばれます。

レモンなどの柑橘類や青リンゴなどの有核果実、白いお花などの香りを持ち、フレッシュな酸味の高いワインになります。

果皮が厚く病害に強いことから、湿度がある環境でも健全に熟すことができます。

近年は国際的な評価も高まり、スペインを代表する白ワイン用品種として注目を集めています。

【おすすめワイン】

①フォルハス・デル・サルネス レイラーナ
樹齢の高いブドウ樹からつくられるボディのあるワインです。

②パソ・デ・セニョランス リアス・バイシャス・アルバリーニョ
爽やかな酸味を持ち、魚介類にも合わせやすいワインです。

まとめ

本記事では、スペインワインの魅力について詳しく解説してきました。

スペインワインは、世界最大のブドウ栽培面積を誇り、多様な気候と地形から個性豊かなワインを生み出しています。

特に赤ワインでは、テンプラニーリョ、ガルナッチャ、モナストレルなどなどの品種から造られる個性的な味わいが特徴です。

品種や産地によって全く異なる個性を見せるため、様々な産地のワインを試してみるのも楽しみ方の一つです。

様々なワインを飲み比べてみることで、さらにスペインワインの魅力が深まります。