
イタリアワイン|長い歴史と多様な地域性で育まれる、食事との相性抜群なワイン
イタリアは、世界で最も古くからワインが生産されている国の一つであり、その豊かな歴史と文化が織りなす多彩なワインは、多くの人々に愛されています。
紀元前から続くワイン造りの伝統は、地域ごとの特性を活かした独自のスタイルを生み出し、ピエモンテ、ヴェネト、トスカーナ、シチリアなど、各地がそれぞれの個性を持ったワインを生産しています。
さらに、イタリアワインはその品質の高さとスタイルの多様性から、世界中で人気を集めており、食事との相性も抜群です。
本記事では、イタリアワインの歴史や主要産地、代表的な品種について詳しく探求し、この美しい国が誇るワイン文化に迫っていきます。
イタリアワインの奥深さを知ることで、新たな発見と楽しみが広がることでしょう。
目次
イタリアワインの歴史と発展
イタリアワインの歴史は、古代にまで遡ります。
その後、ローマ時代を経て、中世やルネサンス期には、ワイン文化がさらに発展し、各地域で独自のスタイルが確立されました。
本章では、イタリアワインの歴史とその発展について詳しく解説します。
古代からの歴史
イタリアに本格的なブドウ栽培を伝えたのは、古代のギリシャ人とエトルリア人とされています。
その後、ローマ人がさらにブドウ栽培を広め、ワインを宗教儀式や日常生活に取り入れました。
この時期には、すでに多様な品種が栽培されており、地域によって異なるスタイルが生まれていました。
中世になると、修道院がワイン生産を担うこととなり、当時の知識層であった修道士たちが品質向上に貢献することになります。
そして、ルネサンス期には、メディチ家をはじめとする名家の後押しにより、芸術や文化とともにワインも発展し、キャンティなどの名醸地が形成されるようになりました。
イタリアは1861年に統一国家となりますが、それまで、各地方がそれぞれごとに発展してきたことも、地方色豊かなワイン文化の形成に寄与していたと言えます。
古代からの歴史
イタリアに本格的なブドウ栽培を伝えたのは、古代のギリシャ人とエトルリア人とされています。
その後、ローマ人がさらにブドウ栽培を広め、ワインを宗教儀式や日常生活に取り入れました。
この時期には、すでに多様な品種が栽培されており、地域によって異なるスタイルが生まれていました。
中世になると、修道院がワイン生産を担うこととなり、当時の知識層であった修道士たちが品質向上に貢献することになります。
そして、ルネサンス期には、メディチ家をはじめとする名家の後押しにより、芸術や文化とともにワインも発展し、キャンティなどの名醸地が形成されるようになりました。
イタリアは1861年に統一国家となりますが、それまで、各地方がそれぞれごとに発展してきたことも、地方色豊かなワイン文化の形成に寄与していたと言えます。
DOC/DOCG制度の確立
1716年にトスカーナ公国のコジモ3世がキャンティ等の生産地域を定めたことが、イタリアで最初の原産地呼称制度の例ですが、国全体で統一的な原産地呼称制度が確立したのは、1963年のDO C(Denominazione di Origine Controllata)導入に依ります。
そして、1980年には、さらに厳しい規定のDOCG(Denominazione di Origine Controllata e Garantita)が初めて認定されました。
これらの制度は、原料ブドウ品種や製法を厳格に規定することにより、特定の呼称の下で造られるワインのスタイルの同一性や品質を担保することを目的としています。
そのため、生産者はワインの提供にあたってスタイルや品質のお墨付きを得ることができ、また消費者も安心してワインを選ぶことができます。
現在、これらの制度は、2008年のEU新ワイン規則に合わせて運用されており、以下は、DOCGとその下位区分についてまとめた表です。
格付け | 説明 |
DOCG | 統制保証原産地呼称。栽培や醸造に関する最も厳しい規制の下で生産される。 |
DOC | 統制原産地呼称。栽培や醸造に関する一定の規制の下で生産される。 |
IGT | 地域特性表示。比較的緩やかな規制の下で生産される。 |
Vino | 地名を名乗らず、生産に関する規制はほとんどない。 |
このような制度によってイタリアワインの品質は維持、向上し、多くの銘柄が世界的に評価されています。
ワイン法に捉われないスーパータスカンの登場
イタリアが世界に誇るワインであるスーパータスカンとは、DOCやDOCGの規制に捉われずに、品質を追求して造られた高級赤ワインです。
このスタイルは1970年代にトスカーナ地方で誕生し、その後世界中で注目されるようになりました。
土着品種が多く使われる一般のイタリアワインとは異なり、スーパータスカンは主に国際品種であるカベルネ・ソーヴィニョンやメルローを使用し、高品質なブレンドワインとして知られています。
この動きは、伝統的な規制による制約から解放され、高い品質と独自性を追求する生産者によって推進されました。
その結果、イタリアワイン界に革新をもたらしたスーパータスカンは世界市場で高い評価を受け、多くの方を魅了しています。
イタリアワインの特徴と魅力

イタリアには20の州があり、それぞれ独自のテロワールに合ったブドウ品種でワインを生産しています。
本章では、イタリアワインの特徴と魅力について詳しく解説します。
地域性と多様性
北はアルプス山脈に抱かれ、北緯35度から47度まで南北に長く伸びるイタリア半島は、三方を海に囲まれ、中央にはアペニン山脈が走っています。
この地形は、各地域の気候に大きな影響を与え、独自のテロワールを形成しています。
たとえば、高級赤ワインで有名なピエモンテ州のバローロ地域は、北海道旭川市よりさらに北となる北緯約44度に位置しますが、北部のアルプス山脈が北からの極度に冷たい風や雨を防ぐことで、ブドウ栽培が可能となっています。
そして、イタリアは20の全ての州でワインが造られており、それぞれの地域が持つ特性によって、様々なブドウ品種が育てられ、多様なスタイルのワインが生まれています。
一般的に、イタリアのテロワールは、大きく北部、中部、南部の3つの地域に分類されることが多いです。
北部・・・一部は海洋性気候ですが、大部分は、乾燥した短い夏の温和な大陸性気候です。
幅広いスタイルのワインが造られており、ピエモンテ州やヴェネト州の赤ワインや、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州やヴェネト州の白ワインが有名です。
また、様々な発泡性ワインも造られています。
中部・・・温暖な地中海性気候で、内陸部は大陸性気候となります。
沿岸部では地中海からの海風が、内陸部ではアペニン山脈の標高が、それぞれブドウ畑に冷涼効果をもたらし、酸と熟度のバランスの良いブドウが育ちます。
中でもトスカーナ州の赤ワインは世界で最も有名なイタリアワインの一つです。
また地元品種も多く栽培されており、個性豊かなワインが造られています。
南部・・・シチリア島とサルデーニャ島という二つの島を含む地域で、温暖から高温の地中海性気候です。
冷涼効果が得られる高い標高にブドウ畑が多く、また、強い日差しによるブドウの日焼けを避けるため、棚仕立てや株仕立てで育てられているブドウもあります。
カンパーニア州やシチリア州で造られる、フルボディでパワフルな赤ワインが有名です。
このように、各地域には固有のテロワールがあり、様々なブドウ品種から、多様なスタイルのワインが生まれます。
以下の表で、代表的な州をまとめます。
州 | 特徴的な品種 | 主なワイン |
ピエモンテ | ネッビオーロ | バローロ、バルバレスコ |
ヴェネト | ガルガーネガコルヴィーナ | ソアーヴェアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ |
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア | ピノ・グリージョグレラ | コッリオプロセッコ |
トスカーナ | サンジョヴェーゼ | キャンティ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ |
カンパーニャ | アリャーニコ | タウラージ |
シチリア | ネレッロ・マスカレーゼ | エトナ・ロッソ |
このように、イタリアは地理的多様性と地元品種の豊富さから、多彩なスタイルのワインを楽しむことができる国です。
伝統と革新の融合
イタリアのワイン造りは、長い歴史がありながらも、伝統に捉われない製法や現代技術の導入に取り組むことで、進化し続けています。
例えば、イタリアでは、かつて、棚仕立てや株仕立てで育てられているブドウも多くありましたが、今では垣根仕立ての導入が進んでいます。
これにより、機械化が進み、より消費者が求めやすい価格でワインを生産することが可能になっています。
また、イタリアの赤ワインは、伝統的にはスロバキアオークの旧い大樽でゆっくりと醸造されていましたが、近年では、フレンチオークの新樽を使用してオークの風味を強調したり、新旧さまざまな樽を組み合わせて複雑さを追求する手法も用いられています。
そして、醸造槽の素材も、コンクリートや温度管理が可能なステンレススチールなど多様化しています。
このように伝統の礎に革新が融合することで、イタリアワインは常に進化し続けており、新しいスタイルやさらに高品質なワインを生産しています。
今後もこのような新たな挑戦によって、新たなイタリアワインの可能性が広がっていくことでしょう。
食事との相性の良さ
イタリアワインは、伝統的に食事とともに楽しまれており、料理との相性が非常に良いことで知られています。
イタリア料理は多様であり、その風味や素材によって最適なワインを選ぶことが重要です。
例えば、トマトソースを使ったパスタには酸味のある赤ワインが合い、一方で魚介にはすっきりした白ワインがおすすめ。
特にイタリアでは、1861年に統一国家となるまでは、ワインと料理が地域ごとに固有に発展してきた歴史があるため、その土地の料理を同じ土地で生産されたワインを合わせることでより確かなマリアージュを楽しむことができます。
酸味や渋み、果実味など、それぞれのワインが持つ様々な個性を活かしたペアリングによって、お互いの風味を引き立てることができるため、多彩な組み合わせを試すことも魅力です。
イタリアの主要ワイン産地

これまで見てきたように、イタリアは、多様なテロワールを背景に、各地で独自のワイン文化を育んできました。
本章では、主要なワイン産地について詳しく解説します。
ピエモンテ州
ピエモンテ州は、イタリア北西部に位置し、寒い冬と暑い夏の大陸性気候です。
栽培地域は、北のアルプス山脈によって冷たい北風や過度の降雨から守られ健全なブドウが育ちます。
ピエモンテ州は、高級赤ワインの生産地として知られ、特にネッビオーロのみから造られるバローロとバルバレスコは、それぞれワインの「王」と「女王」と呼ばれることもあるなど、世界中で高い評価を受けています。
バローロは芳しい香りと重厚感のある味わいで、長期熟成が可能な一方、バルバレスコはより繊細な香りと果実風味が特徴です。
ピエモンテ州には、他にもバルベーラやドルチェットなど、多様な品種が栽培されています。
また、発泡性ワインのアスティも大変人気があります。
この産地の著名な生産者は、「エリオ・アルターレ」や「ガヤ」などで、それぞれ独自のスタイルで高品質なワインを造っています。
ヴェネト州
イタリア北東部に位置し、ロミオとジュリエットの舞台ともなったヴェローナのあるヴェネト州は、適度な降雨のある、温暖な大陸性気候です。
イタリアで最も生産量が多い州の一つでもあり、発泡性ワインから高級赤ワインまで、多彩なワインを楽しむことができます。
ガルガネーガから造られるプロセッコは、発泡性ワインとして世界中で人気が高く、リンゴや洋ナシの香りと軽快な味わいが特徴です。
また、コルヴィーナから造られるアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラは、収穫したブドウを陰干しして凝縮度を高めるアパッシメントと呼ばれる手法で造られる、濃厚なチェリーやドライフルーツの風味にスパイスの香りが加わった、フルボディの高級赤ワインです。
生産者としては「アッレグリーニ」や「マァジ」などが有名です。
トスカーナ州
イタリア中部に位置するトスカーナ州は、温暖な地中海性気候で、フィレンツェやシエナなどの世界遺産の街並みもあります。
美しい丘陵で育てられたサンジョヴェーゼを使用した赤ワインは、イタリアワインの代名詞ともいうことができます。
サンジョベーゼでは、フルーティーで飲みやすく、日常的に楽しむことができるキャンティから、力強く芳醇な果実味と高い酸味やタンニンを持ち、長期熟成もできるブルネッロ・ディ・モンタルチーノまで、様々なスタイルのワインが造られています。
また、スーパータスカンと呼ばれる、ボルドー品種で造られたワインも、国際的に高く評価されています。
「アンティノリ」や「テヌータ・デル・オルネライア」、「テヌータ・サン・グイド」など著名な生産者も数多く存在しており、「オルネライア」や「サッシカイア」などの偉大なワインが生み出されています。
その他の注目産地
イタリアには他にも注目すべき産地があります。
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州・・・白ワインや発泡性ワインが多く造られており、フルボディのピノ・グリージョも有名です。
プーリア州・・・濃厚でフルボディの赤ワインが多く生産されており、特にプリミティーヴォから造られる赤ワインが人気です。
シチリア州・・・火山性の土壌から個性的なワインが作り出されており、特にネロ・ダヴォーラやネレッロ・マスカレーゼなどの地元品種が評価されています。
これらの個性豊かなワインを各地で発見して飲み比べるのも、イタリアワインの楽しみのひとつです。
イタリアの代表的な黒ブドウ品種

イタリアは、その多様な地理と気候を背景に、数多くの黒ブドウ品種を生産しています。
特にサンジョヴェーゼやネッビオーロは、イタリアを代表する品種として知られています。
本章では、それらの品種の特徴を詳しく解説します。
サンジョヴェーゼ
トスカーナ州の紹介でも触れたとおり、イタリア中部を代表する黒ブドウ品種であり、イタリアで最も栽培されている品種でもあります。
サンジョベーゼから造られたワインは、レッドチェリーやレッドプラムなどの赤系果実とハーブの香りがあり、ミディアムからフルボディで、酸味とタンニンが強いです。
幅広いスタイルのワインが造られており、フルーティで飲みやすいキャンティや、フルボディで長期熟成向きのブルネッロ・ディ・モンタルチーノが有名です。
カナイオーロのような地元品種や、メルローのような国際品種とブレンドされることもあります。
ネッビオーロ
イタリア北部のピエモンテ州を代表する晩熟の黒ブドウ品種です。
ネッビオーロからは、スミレやバラなどのお花とレッドチェリーやレッドプラムなどの赤系果実、そしてドライハーブの香りと風味が際立ち、しっかりとした酸味と豊富なタンニンを持つ力強いワインが造られます。
高級赤ワインのバローロやバルバレスコに使用されており、長く熟成されたものは、タンニンが柔らかくなるとともに、きのこやタバコ、皮革などの複雑な香りを持つようになります。
イタリアの代表的な白ブドウ品種
イタリアでは、数多くの白ブドウ品種も生産されています。
特にピノ・グリージョは、国際的にも高い評価を受けています。
ピノ・グリージョ
ピノ・グリージョは、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州やヴェネト州などの、イタリア北東部で広く栽培されている白ブドウ品種です。
桃などの有核果実のフルーティーな香りと中程度の酸味を持ち、フレッシュで飲みやすいワインが造られることが多い品種ですが、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州では、しっかりしたボディのものも造られています。
フランス・アルザス地方で栽培されているピノ・グリと同じ品種ですが、イタリアではピノ・グリージョと呼ばれています。
仏伊以外の国でも、アルザスのスタイルで造られたワインはピノ・グリ、イタリアのスタイルで造られたワインはピノ・グリージョと表記されている場合も多いです。
まとめ
イタリアワインは、その長い歴史と多様な地域性から、様々なスタイルを楽しむことができる魅力的な存在です。
地元品種も多く、各地域のテロワールが反映されたワインは、食事との相性も抜群で、料理を引き立てる役割を果たします。
ぜひ、さまざまな種類のイタリアワインを飲み比べて、その奥深い魅力を体験してみてください。