
カリフォルニアワイン|テロワールを反映して世界を魅了するワイン
アメリカ・カリフォルニア州は、同国最大のワイン産地であり、世界でも屈指の銘醸地として知られています。
アメリカ国内のワイン生産量の約80%以上を占める、まさにアメリカにおけるワイン生産の中心地です。
その生産量は世界のワイン生産国の中で4位前後の規模であり、フランス、イタリア、スペインに次ぐ位置にあります。
そして、世界市場での評価も高く、カナダ、イギリス、日本などに多く輸出しています。
その歴史は、スペイン人宣教師たちが18世紀に持ち込んだブドウの木に始まります。
それ以来、ゴールドラッシュ、フィロキセラ禍、禁酒法、そして世界的な評価の獲得と、数々の転機を経て、カリフォルニア州のワイン生産は発展してきました。
そして、カリフォルニア州のワインは、今や、伝統的なフランスのワインと肩を並べる存在になっています。
本記事ではカリフォルニア州のワインについて詳しく見ていきましょう。

年間受講者数日本一を誇るワインスクール講師。21歳でソムリエ資格を取得。南フランスにある一つ星レストラン「Keisuke Matsushima」にて研鑽を積み、帰国後は南青山「L’AS」を経て、株式会社WINE TRAILを創業。第9回全日本最優秀ソムリエコンクールファイナリスト。
現在はワイン初心者でもワインを楽しめるよう小瓶ワインのサブスク「Homewine(ホームワイン)」を初め、会員3,000人を誇る。
目次
カリフォルニア州のワインの歴史
カリフォルニア州のワインの現在の地位は、興味深い歴史を経て築かれてきました。
18世紀後半の修道士たちによる小規模な生産から始まり、ゴールドラッシュ、禁酒法、そして世界的な評価の獲得まで、カリフォルニア州のワインの歴史は波乱に満ちています。
ワイン造りの始まりと発展
カリフォルニア州でのワイン造りは、18世紀後半にスペイン人宣教師たちがミサ用のワインを作り始めたことに端を発します。
彼らが持ち込んだ「ミッション」と呼ばれるブドウ品種が、この地域での最初のワイン用ブドウとなりました。
そして、1849年に始まったゴールドラッシュは、人口の急増と鉄道網の発達をもたらし、需要の急増から、ワイン産業に大きな転機をもたらしました。
また、ヨーロッパからの移民が持ち込んだ高品質なブドウの苗と、栽培に適した気候の恩恵が、ワインの品質向上に貢献しました。
しかし、19世紀末にフィロキセラ禍が発生し、ブドウ畑は壊滅的な被害を受けます。
禁酒法時代と復興
さらに、1920年から1933年まで続いた禁酒法により、アルコール飲料の製造、輸送、販売、所持が原則として禁止され、ブドウ畑が他の食用作物の栽培や住宅などの用途に転用されるなど、米国のワイン製造業界は大きな打撃を受けました。
禁酒法の撤廃後、生き残ったワイナリーが生産を再開し、ワイン産業は急速に復興を遂げます。
1966年には、「近代カリフォルニアワインの父」と呼ばれるロバート・モンダヴィがナパ・ヴァレーのオークヴィルにワイナリーを設立。
彼の品質へのこだわりと優れたマーケティング手法は、カリフォルニア州全体のレベルを引き上げました。
そして、1976年には、パリで行われた有名なブラインドテイスティング「パリスの審判」で、カリフォルニア州のシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンで造られたワインがフランスの名だたるワインを打ち負かし、世界中に衝撃を与えました。
この出来事は、カリフォルニア州のワインの品質の高さを世界に知らしめる転機となりました。
その後、ナパやソノマを中心にワインツーリズムが発展し、カリフォルニア州のワインの人気と認知度はさらに高まっていくことになります。
今日では、高級ワインから日常的に楽しめるワインまで、幅広い選択肢を提供する世界有数のワイン産地として確固たる地位を築いています。
高品質で生産量が極めて少ないカルトワインの台頭
1990年頃からは高品質で生産量が極めて少ない、「幻のワイン」と呼ばれるカルトワインが台頭してきます。
これらのワインは、限られたコレクターの間で熱狂的な人気を誇り、時に法外な価格で取引されることもあり、その特徴は、希少性と卓越した品質にあります。
多くは小規模な生産者によって造られ、厳選された畑のブドウを使用し、細心の注意を払って、ごく少数量だけ醸造されます。
代表的なカルトワインの生産者は、スクリーミング・イーグル、ハーラン・エステート、シネ・クア・ノンなどです。
これらのワインは、カリフォルニア州のワインの頂点として、このエリアを新世界国で一番有名なエリアへと引き上げた立役者でもあります。
多様な栽培環境と生産者の醸造技術の高さ

カリフォルニア州のワインの魅力は、その多様な栽培環境と高度な醸造技術の融合にあります。
地中海性気候を基調としながらも、カリフォルニア海流によりもたらされる涼しい海風や霧の影響を受けた涼しい沿岸部から海岸山脈の保護を受けて暖かい内陸部まで、多様な気候が存在します。
この気候の多様性が、ナパのカベルネ・ソーヴィニヨン、ソノマのピノ・ノワールなど、各地域に適したブドウ品種の栽培を可能にしています。
同時に、カリフォルニア州の生産者たちは最新の醸造技術を積極的に利用しています。
カリフォルニア州では、カスタム・クラッシュと呼ばれる、自分のワイン製造設備を持たない生産者のためのサービスが見られます。
このようなサービスにより、高額な投資が見合わない規模の生産者でも、正確に質の良いブドウのみを選別できるレーザーによる光学選別機を利用できたり、高度な醸造技術の専門家のサポートを受けることができ、高品質なワインを生産することができます。
このように、カリフォルニア州が持つ多彩な栽培環境と高度な生産技術の融合が、カリフォルニア州のワインの品質と多様性を支える重要な要素となっています。
カリフォルニア州の生産地域
前章ではカリフォルニア州の全般的な特徴について解説しましたが、一般的に州内は5つの生産地域に区分され、地域ごとの異なる特徴を捉えることができます。
カリフォルニアワインの生産地域は、以下のとおりです。
- ノース・コースト
- セントラル・コースト
- セントラル・ヴァレー
- シエラ・フットヒルズ
- サウス・コースト
ノース・コーストはナパやソノマを含み、高品質な赤ワインが有名です。
セントラル・コーストはサンタ・バーバラやモンテレーがあり、多様な気候で多彩なワインが生産されています。
セントラル・ヴァレーはカリフォルニア全体の生産量の大部分を占める肥沃な平野で、デイリーワインが多く生産されています。
シエラ・フットヒルズは標高の高い地域で、多彩なヨーロッパ原産のブドウが栽培されています。
サウス・コーストは長い歴史を持つ、カリフォルニア州でのワイン造りの始まりの地です。
このように、カリフォルニア州では、各生産地域がそれぞれの特色を反映した個性豊かなワインを生み出しています。
原産地の保証を目的としたAVA(アメリカブドウ栽培地域)
さらにカリフォルニア州のワイン産地を知る上で、AVAについての理解も欠かせません。
AVA(American Viticultural Areas)は、1980年代前半から整備されている原産地呼称制度です。
一定の地質学的および地理的特徴を持つブドウ栽培地域ごとに原産地呼称が指定されており、ワインに使用される呼称産地のブドウの最低必要割合などが定められています。
一方、ヨーロッパで一般的に規定されている原産地呼称制度と異なり、AVAは栽培品種や栽培方法、醸造方法に関する規定を設けていません。
そのため、生産者には自由度が与えられ、革新的なワイン造りが可能となっています。
カリフォルニア州内には現在、140以上のAVAが存在し、ナパ・ヴァレー、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、ローダイなどが有名です。
カリフォルニア州の主要産地

前章でカリフォルニア州の生産地域を概観しました。
本章では、さらに解像度をあげて、ナパ、ソノマ、メンドシーノ、サンタ・バーバラの4つの主要な郡(カウンティ)や代表的な生産者について解説します。
それぞれの郡は独自の気候や土壌条件を持ち、個性豊かなワインを生み出しています。
ナパ
ナパは、カリフォルニア州を代表するワイン産地であり、世界的にも高い評価を受けています。
サン・パブロ湾に面した沿岸部では、太平洋から流れ込む冷たい風や霧のおかげでブドウは適度な酸味を保つことができます。
また、暖かい内陸部ではカベルネ・ソーヴィニヨンが主力品種であり、濃厚で力強いワインが特徴です。
有名な生産者には「オーパス・ワン」や「スクリーミング・イーグル」などがあり、高級ワイン市場でも絶大な人気を誇ります。
また、「スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ」は歴史の章でも解説した1976年の「パリスの審判」でフランスの一流ワインを打ち破り、カリフォルニア州の名声を世界に広めました。
ソノマ
ソノマはナパに次ぐプレミアムワインの産地で、多様な気候と地形が特徴です。
冷たい太平洋の影響を受ける涼しい地域ではピノ・ノワールやシャルドネが栽培されており、高い酸と高品質な味わいが楽しめる発泡性ワインも造られています。
一方、暖かい内陸部ではカベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルも栽培されています。
ソノマの中でも特に代表的なAVAは、ピノ・ノワールで有名なロシアン・リバー・ヴァレーやジンファンデルの古樹で有名なドライ・クリーク・ヴァレーなどです。
有名な生産者としては「キスラー・ヴィンヤーズ」や「リッジ・ヴィンヤーズ」が挙げられます。
メンドシーノ
メンドシーノはノース・コーストの最北に位置するとともに冷たい太平洋の影響が強いことから涼しい気候を持つ地域です。
この地域ではピノ・ノワールやシャルドネ、さらには香り高いリースリングなどの品種も高品質で知られているほか、発泡性ワインやジンファンデルの古樹でも有名です。
また、ブドウの有機栽培も先進的に取り組んでいる地域です。
有名な生産者には「リトライ」や「ウィリアムズ・セリエム」があり、それぞれ独自のスタイルで高品質なワインを提供しています。
サンタ・バーバラ
サンタ・バーバラはセントラル・コーストの最南部に位置し、冷たい太平洋の影響を受けた涼しい気候が特徴です。
この地域では特にピノ・ノワールとシャルドネが高品質ということで知られており、昼夜の寒暖差が大きいため、ブドウは酸を保ちながら芳醇な香りを育みます。
代表的なAVAにはサンタ・マリア・ヴァレーやサンタ・リタ・ヒルズがあります。
「オー・ボン・クリマ」などの生産者はブルゴーニュスタイルを取り入れた高品質なワインで有名です。
また、この地域は映画『サイドウェイ』の舞台となったことで一躍有名になりました。
これら4つの産地は、それぞれ異なるテロワールから異なったスタイルのワインが生産されており、多様性に富んだカリフォルニア州のワインの魅力を象徴しています。
それぞれの地域特性を知ることで、自分好みのワインを見つける楽しみも広がるでしょう。
代表的なブドウ品種

カリフォルニア州では、多様な気候と土壌を活かし、様々なブドウ品種が栽培されています。
特に注目すべきは、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、ジンファンデル、シャルドネの4つの品種です。
【カベルネ・ソーヴィニヨン】
カベルネ・ソーヴィニヨンは、特にナパで高品質なワインが生産されている黒ブドウ品種です。
濃厚な果実味としっかりとしたタンニンが特徴で、ブラックベリーやカシスの香りに、オーク樽由来のバニラの香りが加わります。
【ピノ・ノワール】
ピノ・ノワールは、ソノマやサンタ・バーバラなどの冷涼な地域で栽培されている黒ブドウ品種です。
爽やかな酸味とフルーティーな味わいが特徴で、チェリーやラズベリーの香りが広がります。
【ジンファンデル】
ジンファンデルは、カリフォルニア州特有の黒ブドウ品種として知られ、サクラメントやナパで栽培されています。
フルボディで濃厚な味わいが特徴で、赤系果実の香りとスパイシーさが感じられます。
【シャルドネ】
シャルドネは、カリフォルニアで最も栽培されている白ブドウ品種です。
フルボディでクリーミーな口当たりが特徴で、リンゴや洋梨の香りに加え、樽熟成によるバニラやシナモンの香りも楽しめます。
これらの品種は、カリフォルニア州の多様なテロワールを反映し、それぞれ独自の魅力を持つワインを生み出しています。
まとめ
本記事では、カリフォルニア州のワインについて解説してきました。
カリフォルニア州は、多様なテロワールと先進的な醸造技術の融合により、世界的な評価を獲得しています。
18世紀の修道士たちによる小規模な生産から始まり、禁酒法の試練を乗り越え、現代では最先端の技術による高品質なワイン造りが行われています。
また、ナパ、ソノマ、メンドシーノ、サンタ・バーバラなどの主要生産地では、それぞれの地域特性を活かした個性豊かなワインが生産されており、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、ジンファンデル、シャルドネといった代表的な品種が、カリフォルニア州の多様な気候と土壌条件の下で独自の表現を見せています。
カリフォルニア州のワインは、フルーティーで親しみやすい味わいから、複雑で熟成に耐えうる高級ワインまで、様々なスタイルを楽しむことができるでしょう。
世界中の方を魅了し続けているワインをぜひご賞味ください。