
チリ ワイン - コスパ最強のワインを生み出す恵まれた環境
16世紀半ばに宣教師によりブドウ栽培が伝えられたチリは、今では世界で7番目のワイン生産国となっています。
太平洋とアンデス山脈に挟まれた南北に細長いエリアで、多様なブドウ品種が栽培されています。
特にカベルネ・ソーヴィニヨンやソーヴィニヨン・ブラン、カルメネールなどの品種が高い評価を受けており、チリワインはその品質とコストパフォーマンスの良さから、世界中で支持されています。
本記事では、チリワインの特徴や歴史、主要産地、さらには代表的なブドウ品種について詳しく解説し、チリワインの魅力を探求していきます。
目次
チリワインの特徴と魅力

世界で飲まれるチリワインは、生産量の約3分の2が輸出されており(←ここの日本語がわかりにくいです)、日本市場でもトップクラスの国別輸入量を誇ります。
デイリーワインから最高品質のものまで、多彩なスタイルで造られているチリワインの魅力について見ていきましょう。
恵まれた栽培環境と安定した収穫量
チリは、南北が4000km以上ある一方、東西の幅が広いところでも400km弱という、非常に細長い国です。
チリの主要産地も、北は南緯30度のエルキ・ヴァレーから、南は南緯約38度のマジェコ・ヴァレーまで、約1,000 km以上にわたって広がっていますが、その長い距離にもかかわらず、ほとんどの産地は北から南まで一貫して温暖な地中海性気候です。
そして、近年は、エルニーニョ現象やラニーニャ現象といった異常気象の影響を受けることもありますが、概ね、好天が続く長い生育期に恵まれ、年ごとの天候の不順がほとんどない乾燥した気候です。
チリワインには、健康にも良いとされるポリフェノールの含有量が世界一とも言われています。
これは、チリの長い日照時間や低緯度に位置していることからの強い日射と関係がありそうです。
また、独特な地理的特性からの恩恵もあります。
チリの西側では、冷たいフンボルト海流がチリ沿岸に沿って南極大陸から北上しているいっぽう、東側には、6000mを超える高峰をいくつも持つアンデス山脈が連なっています。
東西に位置するブドウ畑は、これらからの冷却効果を十分に受けることができ、酸を残したまま完熟します。
このように、恵まれた栽培環境のおかげで、ブドウは、毎年、安定した品質で健全に育ちます。
親しみやすさと幅広いスタイル
2007年に、日本とチリとの間で締結された経済連携協定(EPA)によりチリワインに輸入にかかる関税率が引き下げられた結果、日本においても、手軽にチリワインを楽しむことができるようになり、今では、どこのアルコール売り場でもチリワインの姿を見ることができます。
当初多く輸入されたのは、シンプルで果実味たっぷりの飲みやすいデイリーワインで、たとえば、チリのカベルネ・ソーヴィニヨンから造られるワインは、「チリカベ」の愛称でも親しまれ、その品質と手に取りやすい価格から、大変な人気を博しました。
そして、その後、国際的な投資が集中したことや、生産者が品質向上に挑戦し続けていることから、チリは、いまでは、世界のなかでも、高品質ワインの生産国の一つとなっています。
もちろん、魅力的なデイリーワインも引き続きたくさんあり、いまでは、エントリーレベルからプレミアムレベルまで、TPOに応じて、様々なチリワインを選ぶことができます。
さらに、従来主流だった果実味豊かなカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローの栽培に加え、冷涼なブドウ畑の開発が進み、フレッシュなシャルドネやピノ・ノワールなどの栽培も増えています。
チリワインは、敷居低く日常から楽しむことができる手頃な価格のものから、最高品質のものまで、あらゆる場面で楽しむことができます。
コストパフォーマンスの高さ
チリワインは、優れたコストパフォーマンスの高さでも知られています。
広大な土地を活かした大規模で効率的な生産、低廉な人件費、そして病圧が低く農薬や防除のコストを削減できる乾燥した気候のおかげで、生産費用を低く抑えることができます。
さらに、特に日本市場においては、2019年以降、経済連携協定(EPA)によりチリからの輸入における関税が撤廃されたことから、流通価格が一層抑えられています。
かつては、流通していたワインがエントリーレベルが主だったこともあり、チリワインの手頃さばかりが強調された時代もありました。
しかし、生産者の努力により、その後に数多く登場してきたプレミアムレベルのワインであっても、上述の低生産コスト等の恩恵を受けられることには変わりはありません。
つまり、チリワインは、幅広い品質レベルにおいて、高いコストパフォーマンスを持っているということができます。
チリワインの歴史と発展
チリワインの歴史は、16世紀にさかのぼります。
宗教的な目的で生産されたワインは、徐々に商業的な側面を持つようになり、現在ではワインの輸出大国となっています。
本章では、チリワインの過去と現代について詳しく解説します。
チリワインの勃興
チリでのブドウ栽培は16世紀半ば、スペインから渡ってきた、宣教師たちによって始まりました。
彼らは宗教儀式で使用するためにワインを生産していましたが、その後、スペインからのチリの独立を迎え、新たな局面を迎えます。
経済発展を受けて誕生した新興の富豪たちがスポンサーとなり、商業的な目的でも栽培が行われるようになっていきます。
そして19世紀になると、チリ政府の働きかけやヨーロッパにおけるフィロキセラの病禍の蔓延により、フランスから多くのワイン醸造家や専門家がチリに渡り、彼らの技術や品種が導入されることで、チリのワイン産業は飛躍的に発展した歴史があります。
特にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどのフランス系品種が広まり、高品質なワインが生産されるようになりました。
現代のチリワイン産業の状況
現代において、チリのワイン産業は急速に成長しています。
特に国際市場では、前述の品質とコストパフォーマンスの高さや、各国との自由貿易協定を締結を進めていることもあり、その人気が高まっており、日本を含む国々で輸入が増えています。
2015年には、日本市場で最も多く輸入されるワインとしてフランスを抜き、チリワインがトップとなりました。
加えて、持続可能な農業への取組みも強化されています。
病圧の少ない乾燥した気候を活かし、多くの生産者が有機栽培や環境保護に配慮した農法を導入し、持続可能な方法でブドウを栽培することに力を入れており、消費者からも支持される高品質なワインが生まれ続けています。
このような状況から、チリは今後も世界的なワイン生産国として、その地位を確立していくことでしょう。
チリの主要ワイン産地

チリ内の主要産地では、さまざまなブドウ品種が栽培されており、それぞれの環境に適した高品質なワインが生まれています。
特に、アコンカグア・ヴァレーや、カサブランカ・ヴァレー、セントラル・ヴァレー地方などは、チリワインの代表的な産地として知られています。
アコンカグア・ヴァレー
アコンカグア地方に位置するアコンカグア・ヴァレーは、特に赤ワインで有名な地域です。
冷涼な沿岸部では、ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネからフレッシュな白ワインの生産も行われていますが、渓谷の中央部は熱く乾燥しており、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローが完熟して、アルコール度数とタンニン度が高い、熟した果実風味を持つフルボディの赤ワインが生産されています。
カサブランカ・ヴァレー
アコンカグア・ヴァレーのすぐ南に位置するカサブランカ・ヴァレーは、沿岸から約30kmのところに位置し、チリで最も冷涼な気候を持つワイン産地の一つです。
太平洋を流れる寒流の影響を受けるこの地域は、主にシャルドネとソーヴィニヨン・ブランを中心に、黒ブドウ品種が主流のチリでは珍しく、生産量の4分の3が白ブドウ品種になっています。
冷涼な気候を好む黒ブドウ品種も栽培されており、いちごなどの赤系果実とハーブの風味を持つピノ・ノアールや、胡椒の風味を持つシラーが知られています。
セントラル・ヴァレー地方
セントラル・ヴァレー地方は、首都サンティアゴから近い広大な生産地で、マイポ・ヴァレーやコルチャグア・ヴァレーなどがあります。
チリのブドウ栽培が始まった土地でもあり、現在では、チリのワインの大半が生産されています。
海岸山脈によって海の影響から守られているため、暖かく、肥沃で、灌漑の行き届いた平野ではブドウが豊かに育ち、熟した果実味が豊かでリーズナブルな赤ワインを生産するのに最適な場所です。
マイポ・ヴァレーでは、主に黒ブドウ品種が栽培され、特にカベルネ ソーヴィニヨンで知られています。
谷底で栽培されたブドウは、タンニンが多いものの柔らかな口当たりとなり、カシスやミントの香りが感じられるワインとなります。
コルチャグア・ヴァレーは、広い地域で、カベルネ・ソーヴィニヨンやシラー、カルメネールなどの様々なブドウ品種が栽培されています。
肥沃な渓谷の中央部で、果実味豊かでリーズナブルな赤ワインが大量に生産されてきましたが、近年では、外縁部の冷涼な地域でプレミアムワインの生産に取り組む生産者も登場しています。
チリの主要な黒ブドウ品種
歴史的経緯もあり、チリでは、フランス系の品種を中心に様々な黒ブドウ品種が栽培されています。
特に、カベルネ・ソーヴィニヨンとカルメネールは、チリワインの代表的な品種として知られており、好天の長い生育期間のおかげで、十分に熟した果実を収穫できます。
コンチャ・イ・トロやモンテスなど、幅広い品質レベルでワインを造っている生産者も多く、TPOに応じて、ワインを選ぶことができます。
カベルネ・ソーヴィニヨン
カベルネ・ソーヴィニヨンは、チリで最も栽培されている黒ブドウ品種です。
カベルネ・ソーヴィニヨンから造られたワインは、「チリカベ」などとも通称され、日本でも広く飲まれています。
単一品種で造られるものやメルローなどとブレンドされるものなどスタイルは様々で、品質もシンプルで果実味豊かなエントリーレベルのものから、重厚で複雑みのあるプレミアムレベルのものまで造られています。
上質なものは、しっかりとしたボディに加え、豊かながらも熟したタンニンと、カシスなどの黒系果実の濃厚な風味が特徴で、ミントやユーカリのニュアンスを伴います。
カルメネール
カルメネールもフランスから持ち込まれた品種で、チリではメルローと思われて栽培されてきましたが、1994 年に正式に別の品種であると特定されました。
現在、フランスではほとんど造られておらず、今となっては、チリ特有の品種ということができます。
ブレンドワインに使用されることが多い品種ですが、最近は、単一品種のワインとしても注目され始めています。
上質のワインは、フルボディで、豊かなタンニンと中程度の酸味を持ち、ブラックベリーのような熟した黒系果実とピーマンやユーカリの特徴、さらには樽熟成由来のコーヒーやダークチョコレートの香りがあります。
チリの主要な白ブドウ品種

チリでは、寒流と山脈による冷涼効果を活かし、白ブドウ品種も栽培されています。
特に人気のある品種は、ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネですが、リースリング、ゲヴュルツトラミネールなどの香り高い品種に取り組んでいる生産者もいます。
ソーヴィニヨン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブランは、チリで最も栽培されている白ブドウ品種であり、そのフレッシュさと豊かな香りが特徴です。
この品種は、特にカサブランカ・ヴァレーやサン・アントニオ・ヴァレーなどの冷涼な地域で栽培されており、太平洋からの冷たい風の恩恵で、酸味がしっかりと残ります。
チリのソーヴィニヨン・ブランからは、柑橘系果実やハーブの香りが感じられ、爽やかで飲みやすいスタイルのワインが多く造られる特徴を持っています。
シャルドネ
シャルドネは、世界中で非常に人気のある白ブドウ品種であり、チリでも高品質なワインが生産されています。
ワインは、オーク使用の有無など、幅広いスタイルで生産されており、涼しい沿岸地域では、柑橘類や有核果実の風味をもつ上質なものとなり、セントラル・ヴァレー地方のような日照が豊富で肥沃な地域では、トロピカルフルーツの果実味が豊かでまろやかなものになります。
まとめ
チリワインは、恵まれた栽培環境と生産者の品質向上への挑戦から、今後ますます注目される存在となるでしょう。
チリワインは、様々なスタイルで造られている上、最上品質のワインであってもコストパフォーマンスに優れているため、TPOに応じて、様々な選択が可能です。
エントリーレベルのワインでも優れた品質のものが多いため、日常の食事に取り入れやすいのも魅力です。
このように、チリワインはその品質とコストパフォーマンスの高さから、今後も多くの人々に親しまれる存在として成長し続けることでしょう。
ぜひ、チリワインを試して、その魅力を体験してみてください。