TOSCANA
トスカーナ|イタリアワインを代表する銘醸地
トスカーナ州は、フィレンツェやシエナなどの世界遺産にもなっている美しい街並みとともに、イタリアワインの銘醸地として世界的な名声を誇っています。
生産量の大部分が赤ワインであり、サンジョヴェーゼを中心とした個性豊かなブドウが美しい丘陵地帯で育てられています。
1716年に世界で初めて原産地保護制度が設けられた歴史ある産地でもあり、古くから品質の維持や向上に高い関心を持っていた地方と言えます。
本記事では、トスカーナワインの特徴や歴史、主要産地などについて詳しく探求し、トスカーナが誇るワイン文化に迫っていきます。
目次
トスカーナの気候と土壌
まずはトスカーナのワインについて知る前に、トスカーナの気候や土壌について見ていきましょう。
トスカーナ州は、北と東をアペニン山脈に囲まれ、西は地中海に向けて開けた地域です。
一般的に温暖な地中海性気候で、ブドウ栽培に十分な降雨量があります。
州全体の半分以上を丘陵地帯や山岳地帯が占め、平野部はごくわずかしかありません。
内陸の丘陵地帯や山岳地帯のブドウ畑は標高による冷涼効果を受けるいっぽうで、沿岸部のブドウ畑は涼しい海風による冷涼効果を受けることができ、酸を残したままブドウが熟すのに最適な環境です。
土壌は場所によって多種多様な顔を見せます。
基本的にはアルべレーゼと呼ばれる粘土石灰質土壌が中心ですが、丘陵部では、ガレストロと呼ばれる粘土と泥灰土を含む片岩質のもろい岩も見られ、これらは排水性と十分な保水力を兼ね備えており、ブドウが健全に育つことができます。
また、沿岸部の川沿いでは、沖積土壌も見られます。
土壌とともに非常に多様な標高もスタイルに影響を与え、標高が高くガレストロベースの北部では、より芳香のあるワインが生まれ、低地で粘土質の南部では、よりボディのあるワインが生まれます。
近年の温暖化の影響により、南部のブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCGでは600mの栽培高度の上限が解除され、より標高の高い場所でも栽培が可能になっています。
トスカーナワインの特徴

トスカーナワインは、イタリアワインを代表する銘醸地として世界的な名声を誇ります。
赤ワインの生産量が多く、伝統的な製法を守り続けるワインから革新的なスーパータスカンまで、多彩なワインが生まれます。
本章では、トスカーナワインの特徴を紐解いてみましょう。
サンジョヴェーゼを中心とした個性的な味わい
トスカーナにおいては、サンジョベーゼという黒ブドウ品種が重要な役割を担っています。
また、赤ワインの生産量が全体の8割を占め、伝統的な製法から革新的な手法まで、多様な醸造方法で造られています。
フィレンツェとシエナの間に広がる丘陵地帯では、チェリーやプラムなどの赤系果実や、ローズマリーなどドライハーブの香りにしっかりとした酸とタンニンを持つ優美で調和のとれたサンジョベーゼのワインが造られています。
一方、ボルゲリ地区では、温暖な気候と小石混じりの粘土質土壌を活かし、国際品種を使用した濃厚で深みのある味わいを持つワインを生み出しています。
トスカーナワインの多様な個性は、濃厚な果実とハーブやスパイスの香り、熟成を経た滑らかなタンニンにより、イタリア料理全般との相性が抜群です。
伝統的なキャンティとスーパータスカン
キャンティは、フィレンツェとシエナの間に広がる丘陵地帯で古くから造られてきたサンジョヴェーゼを主体とした伝統的な赤ワインです。
現在のDOCGの規定では、サンジョヴェーゼを最低70%使用することが定められており、残りは補助品種をブレンドします。
一方でスーパータスカンは、ワイン法による正式なカテゴリーではありませんが、最高品質のワインとしてその名を轟かせています。
これは、1970年代に、ワイン法の規定に捉われなければより高品質なワインを造ることができるのではないか、と当時の生産者たちが始めた新たな挑戦に端を発しています。
たとえば、当時の規定では、キャンティはサンジョベーゼに白ブドウを含む地元品種をブレンドしなければならないと定められていましたが、こういった生産者は、白ブドウのブレンドをやめたり、サンジョベーゼの単一品種でワインを造ったりしました。
これらのワインは、規定から外れているとして、キャンティを名乗れなかったため、ヴィーノ・ダ・ターボラといった一般カテゴリーのワインとして売られることになりました。
しかしその品質の高さから、世界市場から高い評価を獲得しスーパータスカンと呼ばれるようになった歴史があります。
中でも有名になったのが、ボルゲリ地区でサッシカイアやオルネッライアなどの生産者が行ってきた、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどのボルドー品種を活用し、フレンチオークの新樽での熟成を取り入れたワインで、同地区は今ではDOCとして認定されています。
この動きは、伝統的な生産者にも影響を与え、現代では多くの生産者が新しい醸造技術や熟成方法を取り入れ、より品質の高いワイン造りを目指すようになったのです。
その結果、トスカーナは、伝統と革新の様々な技術や取組みを楽しむことができるワイン産地となっています。
トスカーナワインの歴史
前章では、トスカーナの伝統と革新を見ていただきましたが、ここではさらに詳しくトスカーナワインの歴史について見てみましょう。
トスカーナのワイン造りは、紀元前9世紀ごろのエトルリア人から始まり、ローマ時代、中世を経て、現代まで続く歴史ある文化です。
エトルリア時代からの長い歴史
トスカーナのワイン造りは、紀元前9世紀ごろにこの地に定住したエトルリア人から始まります。
彼らは、アンフォラという容器の利用など、高い技術を持っており、ブドウ栽培とワイン造りを行っていました。
その後、ローマ時代を経て、ルネサンス期にはメディチ家などの裕福な一族がブドウ園に投資し、ワインの生産を促進しました。
キャンティ地域の指定と発展
1716年、トスカーナ大公コジモ3世がキャンティなどの生産地域を正式に定めましたが、これは世界で初めての原産地保護制度として知られています。
また、19世紀後半には、ベッティーノ・リカーゾリ男爵が、フォルムラと呼ばれるキャンティのブレンド比率を定め、サンジョヴェーゼを中心とした伝統的な製法が確立されました。
そして、1967年にはDOC認定を受けることになります。
その間、キャンティの人気もあり、認定生産地域は広がっていきましたが、拡大地域で造られるワインにおいて、キャンティとしての個性を統一的に維持していくことが困難となりました。
そこで、1996年に、本来のキャンティの産地が、キャンティ・クラシコDOCGとして、独立したアペラシオンとして認められ、より厳格な品質基準のもと、ワインの個性を守り続けています。
スーパータスカンの誕生と影響
すでに見ていただいたように、1970年代より、スーパータスカンという新たなムーブメントが巻き起こりました。
特に1978年に、デキャンター誌のブラインドテイスティングで、サッシカイアがボルドーのシャトー・マルゴーなどを上回って優勝したことは、世界的に注目を集め、トスカーナワインの新時代の幕開けとなりました。
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの国際品種を使用し、フレンチオークの新樽での熟成を取り入れたスタイルで造られるスーパータスカンは、キャンティなどの伝統的な生産者にも影響を与えました。
その結果、伝統的なワイン造りと現代的な醸造技術が融合し、より高品質なワインが生まれるようになります。
この流れは、トスカーナワインの国際的な評価を大きく高めることになりました。
トスカーナの主要ワイン産地

トスカーナには数多くのワイン産地が点在しますが、特に重要な3つの地域が世界的な評価を得ています。
それぞれの地域で、土壌や気候を活かした個性豊かなワインが生まれ、伝統と革新が見事に調和しています。
本章では、トスカーナワインの主要産地である、3つの地域について詳しく見ていきましょう。
キャンティDOCG、キャンティ・クラシコDOCG
まず1つ目の主要産地は、キャンティDOCGとキャンティ・クラシコDOCGです。
キャンティは、フィレンツェとシエナの間に広がる丘陵地帯で、1716年にトスカーナ大公コジモ3世によって世界で初めての原産地保護制度が確立されました。
サンジョヴェーゼの最低使用割合と熟成期間が定められており、キャンテイDOCGは70%で収穫翌年の3月からリリース可能、キャンティ・クラシコDOCGは80%で収穫翌年の10月からリリース可能となっています。
チェリーやプラムのような赤系果実、ローズマリーなどドライハーブの香りにしっかりとした酸とタンニンが特徴です。
代表的な生産者には、1000年以上の歴史を持ち、フォルムラを定めたベッティーノ・リカーゾリ男爵も当主に名を連ねた、バローネ・リカーゾリがあり、戦後の低迷を乗り越え、現在の32代目当主フランチェスコ・リカーゾリによって見事に復活を遂げています。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCG
2つ目の主要産地は、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCGです。
モンタルチーノは、トスカーナ州シエナ県に位置する高級ワインの産地です。
主に標高250~600mの丘陵地帯に位置し、南にそびえる標高1740mほどのアミアータ山により雨から守られる、乾燥して温暖な地域です。
ブドウの生育期間中の穏やかな好天と、地中海からの涼しい夜風により、ブドウを酸味を保持しながらもゆっくりと完熟させることができます。
また、異なる日照面の斜面や起伏のある丘、標高差(120m~650m)により、近距離でも様々な局地的な気候が生まれ、ワインの複雑性に寄与しています。
この恵まれた自然環境のもと、サンジョヴェーゼ100%で造られるブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCGは、力強く芳醇なサワーチェリーの果実味が特徴で、高い酸味とタンニンにより長期熟成に耐え得る高品質なワインです。
最大収量の制限や、樽熟成も含めた長い熟成期間の規定により、凝縮感のある果実味とドライハーブや皮革などの複雑な熟成香を併せ持つ高級ワインとして世界的な評価を得ています。
ボルゲリDOC
3つ目の主要産地は、ボルゲリDOCです。
ティレニア海に面した温暖な気候を有するエリアで、年間を通じて吹く海風が、酸を保つ冷涼効果とともに、病圧の低下をもたらします。
元々はロゼワインの産地でしたが、現在では、ボルドーブレンドを用いたスーパータスカンと呼ばれる高級ワイン産地として名声を確立しています。
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの国際品種を使用し、フレンチオークの新樽での熟成により、ブラックベリーやレッドプラムなどの濃厚な果実味と樽由来のスパイスの香り、熟成のポテンシャルとなる高いタンニンを持つワインが生まれています。
このスタイルは伝統的な生産者にも影響を与え、トスカーナワインの品質向上に大きく貢献しました。
トスカーナの代表的なブドウ品種

トスカーナでは、伝統的な土着品種のサンジョヴェーゼを中心に、国際品種のカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなど、様々なブドウ品種が栽培されています。
それぞれの品種の特徴を活かしたワインづくりが行われ、世界的に高い評価を得ています。
本章では、トスカーナワインを語る上で欠かせない代表的な品種について見ていきましょう。
サンジョヴェーゼ
トスカーナを代表する黒ブドウ品種であり、イタリアで最も栽培されている品種でもあります。
サンジョベーゼから造られたワインは、レッドチェリーやレッドプラムなどの赤系果実とハーブの香りがあり、ミディアムからフルボディで、酸味とタンニンが強いです。
高品質のブドウから造られたワインは長期熟成にも向いており、熟成が進むと渋みがまろやかになります。
特にブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCGでは、サンジョヴェーゼ・グロッソと呼ばれる優れたクローンが栽培され、より凝縮感のある味わいのワインが生まれています。
【おすすめワイン】
①アンティノリ キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ
優美で調和のとれた味わいと長期熟成のポテンシャルを持つ逸品
②ビオンディ・サンティ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
力強さとエレガンスを併せ持つ伝統的な銘醸ワイン
メルロー
カベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされることが多い品種で、滑らかでまろやかな味わいが特徴です。
レッドプラムやブラックベリーの豊かな果実味に、チョコレートやスパイスのニュアンスが加わります。
単一品種のワインとしても、ボルゲリやマレンマなどの産地で生産されています。
トスカーナの土壌と気候により、フランスとは異なる個性を持つワインが生まれ、独自の魅力を放っています。
【おすすめワイン】
①テヌータ・デル・オルネッライア マッシェート
ビンテージによっては、100%のメルローから造られる希少な最高級ワイン
②テヌータ・デル・オルネッライア レ・ヴォルテ・デル・オルネライア
凝縮した果実感と滑らかな口当たりが特徴的な上質ワイン
カベルネ・ソーヴィニヨン
1970年代からボルゲリ地区を中心に栽培が始まった国際品種です。
カシスやブラックベリーを思わせる豊かな香りとパワフルで重厚な味わいが特徴で、長期熟成に適しています。
スーパータスカンの代表的な品種として使用され、サンジョベーゼとのブレンドにも使用されます。
フレンチオークの新樽での熟成により、複雑味のある味わいを実現しています。
トスカーナの温暖な気候と相性が良く、完熟した果実味とエレガントな酸味のバランスが特徴です。
【おすすめワイン】
①テヌータ・サン・グイド サッシカイア
ボルドースタイルを確立した革新的なワインの先駆者
②テヌータ・デル・オルネッライア オルネッライア
凝縮感と優雅さを兼ね備えた最高級ワイン
まとめ
本記事では、トスカーナのワインについて様々な側面から解説してきました。
トスカーナは、イタリアワインを代表する銘醸地として世界的な名声を誇ります。
赤ワインの生産量が全体の8割以上を占め、伝統的なワインから革新的なワインまで、多彩な味わいが楽しめます。
特に、サンジョヴェーゼを主体とした伝統的なキャンティと、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの国際品種を使用したスーパータスカンを飲み比べてみることで、トスカーナワインの魅力を存分に味わえるでしょう。
この2つのスタイルの違いを楽しむことで、伝統と革新が見事に調和したトスカーナワインの奥深さを発見できるかもしれません。

イタリア トスカーナ