ソムリエの論述試験は、単なる筆記試験ではなく実務能力を問う重要な試験です。
ワインに関する専門知識だけでなく、論理的かつ簡潔でわかりやすい表現力が求められます。
ソムリエの現場では、
- お客様にワインの特徴を分かりやすく説明する
- 料理とのペアリングを提案する
- スタッフの教育を行う
といったスキルが必要です。そのため論述試験では、ワインの知識だけでなく、実践的な表現力や提案力が問われます。
本記事では、試験の概要や出題傾向、効果的な対策法を詳しく解説します。
- 論述試験の出題傾向を知り、効率的に対策したい方
- 論述問題の書き方に自信がない方
- 実践的なペアリングや業務シーンの問題対策をしたい方

この記事の監修ソムリエ
佐々木 健太
ホームワインアカデミープロデューサー
年間受講者数日本一を誇るワインスクール講師。21歳でソムリエ資格を取得。南フランスにある一つ星レストラン「Keisuke Matsushima」にて研鑽を積み、帰国後は南青山「L’AS」を経て、株式会社WINE TRAILを創業。第9回全日本最優秀ソムリエコンクールファイナリスト。現在はワイン初心者でもワインを楽しめるよう小瓶ワインのサブスク「Homewine(ホームワイン)」を初め、会員3,000人を誇る。
ソムリエ 論述試験の概要

本章では、論述試験の日程・内容・評価基準について詳しく解説します。
すでに知っている方も、確認しながら読み進めていただくとより突破率があがるでしょう。
試験日程・場所
論述試験は二次試験(テイスティング試験)の後にそのまま行われるため、試験時間や集中力の配分を意識した対策が重要です。
しかし、合格発表日は論述試験が三次試験に分類されているため、サービス実技試験の結果発表日と同じ日になる点は注意しましょう。
- 試験日:二次試験当日(2025年10月6日)テイスティング試験終了後に実施
- 合格発表:三次試験と同じタイミング(2025年12月初旬)
- 試験会場:二次試験(テイスティング試験)と同じ会場
【ソムリエ試験のスケジュール詳細】
11:30 | 開場 |
11:40〜 | オリエンテーション |
11:50〜12:30 | テイスティング試験(40分) |
12:30 | ※二次試験免除の方着席 |
12:35〜12:55 | 論述試験(20分) |
13:05 | 解散 |
論述試験の内容
- 解答方式:手書き記述
- 試験時間:20分
- 問題数:3問(200~300文字以内で解答)
試験では、単に知識を羅列するだけではなく、わかりやすく伝える力が求められます。実際にソムリエになりお客様へサービスをしている時を意識した解答が重要になります。
それではまずは過去の出題例を見てみましょう。
- 2020年:「マスカット・ベーリーA」と相性が良いと思われる料理を 1 つ挙げ、理由と共に 200 字以内で説明してください。
- 2023年:「ワインにあまり詳しくないお客様からオーガニックワインについて聞かれました。」300 字以内で説明してください。
評価基準
論述試験の採点は、以下の3つの基準で行われます。
- 論理的な構成・簡潔な表現:わかりやすく、明確に要点を伝えられているか
- 正確な知識:ワインの名称、産地、地理的表示などが正しく記述されているか
- 実践的な表現力:サービスのプロフェッショナルとしてお客様や料理を引き立てる表現ができているか
特に、2023年はワインショップなどで利用されるワインの魅力が表現されたPOPを作成する問題が出題されており、暗記型から理解型へシフトしていると言われています。
最近のソムリエ論述試験の傾向と出題パターン
【過去の出題テーマ(2020年~2024年)】
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年度 | 問題1 | 問題2 | 問題3 |
2020年 | ワインをあまり飲んだことが無いお客様に対して、自宅で飲むワイン(家飲みワイン)を 200 字以内で提案をしてください。 | 「マスカット・ベーリーA」と相性が良いと思われる料理を 1 つ挙げ、理由と共に 200 字以内で説明してください。 | 「オーストリアン・ゼクト g.U.」ついて説明してください。 |
2021年 | カリフォルニア/シャルドネ種の白ワインを飲むお客様に対して、お勧めの料理を1つ提案し、理由を含めて200字以内で説明してください。 | 小売価格1万円相当のワインを注文(または購入)したお客様から、「味がおかしい」というクレームがありました。あなたの対応を詳細に300字以内で説明してください。 | ワインの生産から消費までの過程において、「サステイナブルな取り組み」の事例を1つ挙げ、200字以内で説明してください。 |
2022年 | テイスティング試験で供出3番目のワインと相性が良いと思われる料理を 1 つ挙げ、理由と共に200 文字以内で説明してください。 | ロゼワインの醸造法とそれぞれのタイプの魅力、楽しみ方について 300 字以内で説明してください。 | ワインを「熟成させる保管」をするために必要な条件について説明してください。 |
2023年 | テイスティング試験で供出された1番目のワインをワインショップで販売するにあたり、POP(Point of Purchase)を作成することになりました。自身のテイスティングに基づき、枠内を自由に使用してコメントを書いて(描いて)ください。1番目のワイン:ソーヴィニヨン・ブラン 2021 年(フランス/ボルドー) | ワインにあまり詳しくないお客様からオーガニックワインについて聞かれました。300 字以内で説明してください。 | 料理に相応しいワインを考察する上でのポイントを述べてください。 |
2024年 | あなたはスーパーマーケットで酒類販売の担当をしています。テイスティング試験で供出された1番目のワインをプロモーションとして1カ月間販売するにあたり、あなたが考える方策を 300 字以内で説明してください。供出された1番目のワイン:リースリング 2021 年(ドイツ) | 自宅でよくチーズを楽しんでいるというお客様にワインを提案してください。また、その理由や楽しみ方などを含めて 200 字以内で説明してください。 | 日本における地理的表示制度(G.I.)で「ぶどう酒」を除く飲料について簡潔に 200 字以内で説明してください。 |
近年の論述試験は、大きく3つのパターンに分類できます。
- ペアリングに関する問題(例:「二次試験1番目○○のワインに合う料理を提案せよ」)
- ワインの専門知識を問う問題(例:「オーガニックワインとは?」)
- 業務シーンを想定した問題(例:「POPを作成せよ」「二次試験2番目のワインを、スーパーで1ヶ月販売する販売促進プランを立案せよ」)
特に、実践的な問題の増加が顕著でワインショップやレストランでの接客スキルも試されています。
ソムリエ論述試験の具体的な対策法

ソムリエ論述試験は、どれだけ知識が豊富でも論理的かつ簡潔に説明できなければ高得点にはつながりません。
この章では、論述試験で出題される3つの主要な問題タイプに対して、具体的な対策方法を解説します。また、苦手なテーマが出た際の対応法もご紹介!
※例題は過去の問題をベースにオリジナルで制作しています。解答例は模範解答ではございませんのでご注意ください。
ペアリング関連の論述試験対策
ペアリング問題では、ワインと料理の組み合わせを問われます。
最も得点しやすい問題でもあるため、本番ではペアリングの問題から解き始めるのがおすすめです。先にスムーズに解答することで気持ちを落ち着け、他の問題にも余裕を持って取り組めるようにしましょう。
【ワインの種類ごとの4つのペアリング例】
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ワインのタイプ | 代表的な品種 | ペアリング料理 | 理由 |
エレガント(軽い)白ワイン | ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング | 鯛の塩焼き | 酸味が魚の旨みを引き立て、柑橘系の香りがレモンを絞ったような効果を生む |
リッチ(重い)白ワイン | シャルドネ、ヴィオニエ | サーモンのクリームソース | ワインのバニラ香とクリームソースが調和し、コクのある味わいが楽しめる |
ミディアムボディの赤ワイン | ピノ・ノワール、マスカット・ベーリーA | 鶏の照り焼き | 果実味と酸味が甘辛いタレと相性が良く、タンニンが控えめなため肉の食感を損なわない |
フルボディの赤ワイン | カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、テンプラニーリョ | ラムチョップ(スパイスを効かせた料理) | タンニンの強さがスパイスと調和し、果実味が肉のジューシーさを引き立てる |
エレガント(軽い)白ワインとペアリング
エレガントな白ワインは、爽やかな酸味とフレッシュな果実味が特徴です。食材の持ち味を活かすシンプルな調理法の料理とよく合います。
- 代表品種:ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング
- ペアリング例:鯛の塩焼き
- 相性の理由
- ワインの酸味が鯛の旨みを引き立てる
- 柑橘系の香りがレモンを絞ったような効果を生む
テイスティング試験で出た1番目で出題された、フランスのリースリングに合う料理とその理由を説明してください。
解答例
エレガントな白ワインには、鯛の塩焼きがよく合います。ワインの爽やかな酸味が鯛の旨みを引き立て、余韻をすっきりと仕上げます。柑橘系の香りがレモンを絞ったような効果を生み、シンプルな塩味と絶妙に調和するため、心地よいバランスが楽しめます。(124文字)
リッチ(重い)白ワインとペアリング
樽熟成を経たリッチな白ワインは、バニラやアーモンドの香ばしさが感じられ、コクのある料理と相性抜群です。
- 代表品種:シャルドネ、ヴィオニエ
- ペアリング例:サーモンのクリームソース
- 相性の理由
- クリーミーなソースとワインのバニラ香が調和
- ワインのほどよい酸味が、脂の多い魚のコクを爽やかに整える
カリフォルニアのリッチなシャルドネを飲むお客様に対して、料理を1つ提案し、理由を含めて200文字以内で説明してください。
解答例
リッチな白ワインには、サーモンのクリームソースがよく合います。シャルドネの豊かな果実味と樽熟成由来のバニラ香が、クリーミーなソースと調和し、コクのある味わいを引き立てます。程よい酸味がサーモンの脂を爽やかに流し、バランスの良いペアリングが楽しめます。(122文字)
ミディアムボディの赤ワインとペアリング
果実味と酸味のバランスが取れたミディアムボディの赤ワインは、和食やカジュアルな料理との相性がいい万能タイプです。
- 代表品種:ピノ・ノワール、マスカット・ベーリーA
- ペアリング例:鶏の照り焼き
- 相性の理由
- フルーティーな果実味と甘辛いタレが絶妙にマッチ
- タンニンが控えめで、鶏肉のやわらかい食感を邪魔しない
「マスカット・ベーリーA」と合わせるお勧めの料理を 1 つ挙げ、理由と共に200 字以内で説明してください。
解答例
マスカット・ベーリーAには、鶏の照り焼きがよく合います。ワインの軽やかな果実味と程よい酸味が、甘辛いタレとバランスよく調和し、後味をさっぱりと仕上げます。タンニンが控えめなため、鶏肉のやわらかい食感を損なわず、心地よいマリアージュが楽しめます。(123文字)
フルボディの赤ワインとペアリング
タンニンが豊富で力強い味わいのフルボディ赤ワインは、スパイスやグリルの香ばしさと相性抜群です。
- 代表品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、テンプラニーリョ
- ペアリング例:ラムチョップ(スパイスを効かせた料理)
- 相性の理由
- 強いタンニンがスパイスと調和し、味わいを引き締める
- 果実味が肉のジューシーさを引き立てる
4番の赤ワイン(オーストラリアのシラーズ)に合う料理を1つ挙げ、その理由を200字以内で説明してください。
解答例
タンニンの強い赤ワインには、スパイスを効かせたラムチョップがよく合います。シラーズの豊かな果実味としっかりしたタンニンが、ラムのジューシーな脂と絶妙にマッチ。黒コショウやハーブを効かせた味付けが、ワインのスパイシーな風味と調和し、互いの魅力を引き立てます。(113文字)
ワインと料理のペアリングを考える際には、次のポイントを押さえておくとスムーズです。
- 味わいを合わせる(クリーミーな料理には樽熟成の白ワイン)
- 産地を合わせる(フランスワインにはフランス料理)
- 季節やシチュエーションを意識する(夏は軽めの白、冬はしっかりした赤)
- お店のコンセプトに合わせる(カジュアルなら気軽なワイン、高級店なら熟成ワイン)
この基本を押さえれば、どんな問題が出題されても自信を持って解答できるはずです!
ワインの専門知識を問う論述問題の対策
ソムリエ論述試験では、単なる暗記ではなく「理解を深めた説明力」が求められます。
特に、ワインの専門知識を一般消費者に分かりやすく伝える力が重要です。
- オーガニックワインとは?
- サステイナブルなワイン造りとは?
- 日本の地理的表示制度(GI)について
論述問題では、「結論→具体例→補足説明」の順番で記述するのがコツです。
近年、世界的に注目されている「サステイナブルな取り組み」について、ワインの生産から消費までの過程における事例を1つ挙げ、200字以内で説明してください。
解答例①
「ビオディナミ農法」は、サステイナブルな取り組みの一例です。この農法では、化学肥料を使わず、月の満ち欠けや天体の動きを考慮して栽培を行います。土壌の健康を維持し、自然環境との調和を重視することで、持続可能な農業を実現。さらに、人工的な介入を減らすことで、ワイン本来の個性を表現できる点も特徴です。
【さらに解説】
- 問題文に簡潔に答えを述べる
- 「ビオディナミ農法」は、サステイナブルな取り組みの一例です。
- 具体例や具体的な説明を述べる
- この農法では、化学肥料を使わず、月の満ち欠けや天体の動きを考慮して栽培を行います。
- なぜ(why)やどのように(How)を意識して、更に説明を加える
- 土壌の健康を維持し、自然環境との調和を重視することで、持続可能な農業を実現。さらに、人工的な介入を減らすことで、ワイン本来の個性を表現できる点も特徴です。
日本ワインの地理的表示について説明してください。
解答例②
日本ワインの地理的表示(GI)は、品質や産地の特性を保証する制度です。特に「GI山梨」は、日本で初めて認定されたワインのGIで、山梨県産のブドウを100%使用し、県内で醸造されたワインにのみ適用されます。GI認定により、ワインの品質基準が確立され、消費者が産地を意識して選べるメリットがあります。
【さらに解説】
- 問題文に簡潔に答えを述べる
- 日本ワインの地理的表示(GI)は、品質や産地の特性を保証する制度です。
- 具体例や具体的な説明を述べる
- 特に「GI山梨」は、日本で初めて認定されたワインのGIで、山梨県産のブドウを100%使用し、県内で醸造されたワインにのみ適用されます。
- なぜ(why)やどのように(How)を意識して、更に説明を加える
- GI認定により、ワインの品質基準が確立され、消費者が産地を意識して選べるメリットがあります。
業務シーンを想定した論述問題の対策
近年の論述試験では、POP作成や販売促進プランなど、実務に即した問題が増えています。
これは、ソムリエの仕事が単なる「ワインの知識提供」ではなく、実際に売り場でワインをどのように提案し、販売するかが重視されるようになってきたためです。
特に、ワイン業界全体が「消費者に分かりやすく伝えること」に注力する流れになっているため、
POPやプロモーション施策を考える問題が出題されやすくなっています。
【出題例】
- 2023年:ワインショップで販売するためのPOPを作成(ソーヴィニヨン・ブラン 2021)
- 2024年:スーパーでワインを販売するプロモーションを300字以内で説明(リースリング 2021)
- 実際のPOPを模写してみる
- 接客の流れをシミュレーションし、200字以内でまとめる
- ワインショップやレストランで店員にワインの説明を聞いてみる
ワインをあまり飲んだことが無いお客様に対して、自宅で飲むワインを 200 字以内で提案をしてください。
解答例
初めての家飲みワインなら、フルーティーで飲みやすいピノ・ノワールがおすすめです。渋みが穏やかで、軽やかな味わいなので、チーズやハム、パスタなどと気軽ペアリングを楽しめます。ワインの温度は冷やしすぎず16〜18℃ので飲むとより美味しく感じられます。(150文字)
レストランで2万円相当のワインを注文したお客様から「味がおかしい」というクレームがありました。あなたの対応を詳細に300字以内で説明してください。
解答例
まずはお客様を立て、具体的にどのような味の異常を感じたのかを確認します。その後、保管状態や開栓後の経過時間を伺いワインの状態に影響がなかったかを確認。問題が明らかにワインの欠陥である場合は、交換または返金の対応を提案します。原因が特定できない場合でもお客様に納得いただけるよう、ワインの特性や劣化の可能性について丁寧に説明します。最後に不快な思いをさせたことを謝罪し、信頼回復を図ります。(283文字)
苦手なテーマが出た場合の対応法
いきなり文章を書き始めるのではなく、以下の順で解答を作成しましょう。
- 問題のテーマに沿ったキーワードを3~4つピックアップする
- その後テーマに対し、結論を述べる
- ピックアップしたキーワードで肉付けしていく。
ソムリエ論述試験は、知識だけでなく「表現力」「提案力」「実務能力」が試される試験です。
出題傾向を把握し、ペアリングや専門知識、業務対応のシミュレーションを行うことで、より実践的な対策が可能になります。
試験本番に向けて、ぜひ「結論→具体例→補足説明」の型を意識しながら練習を重ねていきましょう!
試験本番直前!論述試験の練習問題8問
ここでは試験直前を迎えている方向けに、当サイト所属の専属ソムリエが今年の論述問題の予想を行いました。
解説付きオリジナル練習問題を本番形式で10問作成してみましたので、試験直前の力試しとして挑戦してみてください。
◼︎論述問題 – No.1
近年、日本国内のワイン産地が国際的な評価を高めています。日本のワイン産地の特徴と、その評価向上に寄与している要因について具体的に記述してください。(200字以内)
【模範解答】
日本のワインは冷涼な気候と複雑な土壌に育まれ、甲州やマスカット・ベーリーAなど固有品種に加え、シャルドネなど国際品種の醸造技術も進化しています。小規模生産者が多く、畑の個性を生かした丁寧な造りが特徴。繊細な味わいは出汁を活かす和食と好相性で、海外の専門家からも高く評価されています。(198字)
【ソムリエの解説】
この問題は、日本のワイン産業の現状と強みを理解しているか問うものです。単に品種名を挙げるだけでなく、気候や生産規模、そしてそれがワインのスタイルにどう影響しているかを論理的に説明することが重要です。特に「繊細な味わいと和食との相性」は、日本ワインが国際競争力を持つ大きな要因なので、必ず触れておきたいポイントです。
◼︎論述問題 – No.2
ワインの熟成における、樽の役割と影響について解説してください。(200字以内)
【模範解答】
樽はワインに風味と複雑さを与える重要な役割を持ちます。オーク材からバニラやクローブ、ロースト香が抽出され、豊かな香りを加えます。樽の微細な孔から酸素が入り、タンニンをまろやかにし色を安定させます。また、「シュール・リー」で酵母の澱と接触し、旨味やコクが増します。(198字)
【ソムリエの解説】
樽熟成の基本的な知識を問う問題です。「風味付け」と「酸素供給による熟成促進」という二つの主要な役割を明確に区別して説明することがポイントです。特に、後者の酸化熟成のプロセスが、ワインの構造をいかに変えるかを具体的に述べることができれば高得点に繋がります。
◼︎論述問題 – No.3
「ビオディナミ農法」とは何か、その特徴と一般的な有機農法との違いを説明してください。(200字以内)
【模範解答】
ビオディナミ農法は、オーストリア人のルドルフ・シュタイナーが1924年に提唱した、宇宙のサイクルや月の満ち欠けを考慮した農法です。牛の角に詰めたハーブなどの調合剤(プレパラシオン)を使い、畑全体の生命力を重視します。一般的な有機農法が化学肥料などを使わず、ビオディナミはさらに自然界のエネルギーを積極的に取り入れる点が大きな違いです。(199字)
【ソムリエの解説】
有機農法との違いを明確にすることが肝心です。「化学農薬を使わない」という共通点だけでなく、「宇宙のサイクル」や「調合剤(プレパラシオン)の使用」といったビオディナミ農法特有の考え方を正確に記述することが求められます。単なる定義だけでなく、その哲学的な側面にも言及できると、理解度の深さを示すことができます。
◼︎論述問題 – No.4
レストランで、お客様にワインを提供する際の適温管理の重要性について、その理由を具体的に記述してください。(200字以内)
【模範解答】
ワインの適温管理は、その魅力を最大限に引き出すために重要です。白やスパークリングは冷やすと酸味や爽やかさが増し、赤は冷やしすぎるとタンニンが硬く渋みが強まります。適温は香りと味のバランスを整え、品質に直結します。(197字)
【ソムリエの解説】
この問題は、ソムリエとしての実務能力を測るものです。「なぜ適温管理が重要なのか」という理由を、「香り」や「味わい」にどう影響するかという観点から具体的に説明してください。単に「美味しくなるから」ではなく、「酸味やタンニン」といった具体的な要素を用いて論じることが重要です。
◼︎論述問題 – No.5
近年、世界的に注目を集める「オレンジワイン」とは何か、その特徴と製造方法を簡潔に説明してください。(200字以内)
【模範解答】
オレンジワインは白ブドウを原料に、赤ワインのように果皮や種子と一緒に発酵させて造ります。この工程で独特の琥珀色と渋みが生まれ、白ワインにはない複雑な香りや厚みが特徴です。発祥はジョージアで、近年世界中で造られています。(197字)
【ソムリエの解説】
「オレンジワイン」の定義と製法を正確に記述することが求められます。「白ブドウを使い、赤ワインのように醸す」という点が核心です。色合いだけでなく、この製法が香り(ピーチティー、烏龍茶)や、味わいにどう影響するか(タンニン、厚み)まで言及できると、さらに良いでしょう。トレンドのワインに対する知識を問う問題です。
◼︎論述問題 – No.6
ワインとチーズのペアリングの基本原則と、その具体的な例を挙げて説明してください。(200字以内)
【模範解答】
ワインとチーズのペアリングの基本は、味わいや風味を合わせる「同調」と、互いの個性を引き立て合う「補完」です。「同調」は軽やかな白ワインにフレッシュなチーズを、「補完」はフルーティーな赤ワインに熟成したチーズをあわせます。これらが絶妙なバランスを生み出します。(200字)
【ソムリエの解説】
ペアリングの基本的な考え方を「同調」と「補完」という二つのキーワードで説明できるかがポイントです。単に組み合わせ例を挙げるだけでなく、なぜその組み合わせが合うのかを論理的に説明することが重要です。チーズのタイプとワインのタイプを結びつけて考えましょう。
◼︎論述問題 – No.7
世界的にブドウ栽培に影響を与えている気候変動について、具体的な影響と、生産者が行っている対策を記述してください。(300字以内)
【模範解答】
気候変動はブドウ栽培に深刻な影響を与えています。気温上昇によりブドウの成熟が早まり、酸度が低くアルコール度数の高いワインが増える傾向にあります。また、干ばつや異常気象も深刻です。これに対し、生産者は耐熱性や耐病性のブドウ品種を導入したり、日差しの強い畑ではブドウの葉を多く残したりするなど、栽培方法を工夫しています。さらに、標高の高い場所や冷涼な地域への新たな畑の開拓も進められています。(239字)
【ソムリエの解説】
気候変動という現代的なテーマに対する知識を問う問題です。「温暖化がブドウにどのような影響を与えるか」という具体的な影響(例:酸度の低下、アルコール度数上昇)と、「それに対してどのような対策が取られているか」という生産者側の取り組みの両方を記述することが重要です。
◼︎論述問題 – No.8
ノンアルコール・ワインや低アルコール・ワインが注目される背景と、その製造方法について説明してください。(300字以内)
【模範解答】
ノンアルコール・ワインや低アルコール・ワインは、健康志向の高まりや多様なライフスタイルの広がりを背景に注目されています。飲酒運転のリスク回避やアルコールを控える方にとって、ワインの風味や雰囲気を楽しむ新たな選択肢を提供します。製造方法は、アルコールを最初から生成しない方法(非発酵法)と、通常のワインを造った後、低温蒸留法や逆浸透膜法などを用いてアルコールを除去します。これにより、元のワインの風味を保ちつつ、アルコール分のみを分離することが可能です。(287文字)
【ソムリエの解説】
この問題は、市場のトレンドと、それに伴う製造技術の知識を問うものです。「健康志向」や「多様な飲用シーン」といった社会的背景を明確にし、その上で「アルコール除去技術」を具体的に説明することがポイントです。一般的な清涼飲料水とは異なる、あくまで「ワインからアルコールを除去する」というプロセスであることを強調しましょう。
まとめ
ソムリエ論述試験では、単なる知識の暗記ではなく、「論理的に伝える力」「実務に活かせる提案力」が試されます。
特に、ペアリング問題・専門知識の説明・業務シーンの対応という3つの軸を意識して学習することで、どのような問題が出題されても冷静に対応できるようになります。
論述試験は、準備次第で大きく差がつく試験です。出題傾向を把握し、解答の型を身につけ、繰り返し練習することで本番で自信を持って解答できる力を養いましょう。
しっかりと対策を重ね、最後は自信を持って本番に挑み、合格を勝ち取りましょう!