ワインのプロといえばソムリエですが、ワインを職業にしていなくても取得でき、同等のステータスを持つ資格 があります。
それが ワインエキスパート資格です。毎年3,000人以上が挑戦し、受験者数はソムリエ資格を上回る人気を誇ります。
取得者同士でワイン会を開くことも多く、ワイン好きが集まる素敵なコミュニティが形成されているのも魅力のひとつです。
本記事では、5,000名以上の合格者を輩出したソムリエ佐々木が、ワインエキスパート資格について徹底解説します。
- ワインエキスパート試験を今年受験される方
- ワインエキスパートを受験するか迷っている方
- 合格するまでの費用や勉強方法を知りたい方
- 独学で勉強するか、ワインスクールに通うか迷っている方

この記事の監修ソムリエ
佐々木 健太
ホームワインアカデミープロデューサー
年間受講者数日本一を誇るワインスクール講師。21歳でソムリエ資格を取得。南フランスにある一つ星レストラン「Keisuke Matsushima」にて研鑽を積み、帰国後は南青山「L’AS」を経て、株式会社WINE TRAILを創業。第9回全日本最優秀ソムリエコンクールファイナリスト。現在はワイン初心者でもワインを楽しめるよう小瓶ワインのサブスク「Homewine(ホームワイン)」を初め、会員3,000人を誇る。
ワインエキスパートはどんな資格?

ワインエキスパート資格は、一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が認定する、ワイン愛好家向けの民間資格です。
累積合格者数は、認定開始年の1996年から2024年までの26年間で、合計約2.5万人にのぼります。
年々ワインエキスパートの受験者数は増えており、注目度が高まっています。また、2024年度の取得者の女性比率は56%と女性からの人気も高くなり始めています。
ワインエキスパート資格は満20歳以上ならだれでも受験可能
ワイン業界での従事年数が3年間必要なソムリエ資格に対し、ワインエキスパート資格は20歳以上であればどなたでも受験可能です。
ソムリエを目指されている方も、従事年数が3年に満たない場合は、ワイン愛好家向けの資格ワインエキスパート取得を検討することができます。
ワインエキスパート資格はソムリエ資格と同格
ワインエキスパート資格は、ソムリエ資格と同じく、ソムリエ協会が作成する約900ページの教本から問題が出題されます。ワインの歴史、産地、ブドウ品種、法律など幅広い知識が問われます。
試験は一次試験(筆記)と二次試験(テイスティング)で構成されており、ソムリエ資格と違うのは三次試験(サービス実技)がない点だけです。
ワインエキスパート資格に合格するためには、一般的に半年〜1年間の準備期間が必要になります。このことから、ワインエキスパート資格とソムリエ資格は、同じレベルの知識を認定する資格と言っても過言ではありません。
ワインエキスパートの概要と合格率、難易度

この試験は1年に1回実施され、ワイン知識が問われる筆記中心の一次試験は毎年7月から8月に、テイスティング能力が問われる二次試験は10月に実施されます。
一次試験に合格した方のみ、二次試験を受験することができます。それぞれで試験内容は異なり、違った試験対策が必要になります。この章では一次試験、二次試験の詳細を見ていきましょう。
一次試験の概要
- 試験日程:7月中旬から8月末まで
- 試験方式:CBT(パソコン選択)
- 試験内容:70分、120問(選択式問題)※一部記述
- 出題範囲:ソムリエ教本(約900ページ)
一次試験では、世界各国のワイン生産地やブドウ品種、醸造方法、さらにはワインと郷土料理のペアリングに関する知識まで、非常に広範囲な内容が問われます。
フランスやイタリアなどの伝統的なワイン産地だけでなく、新世界のワイン事情にも精通している必要があります。
また、試験形式は基本的に4択問題で構成されており、正しい選択肢を1つ選ぶ回答方法が中心です。しかし、中には6つの選択肢から2つの正解を選ぶ形式や記述回答も用意されています。
全国に数百ヶ所ある会場で、都合の良い会場と日付で試験を予約することができます。一次試験のみ、申込時に受験回数を1回もしくは2回の選択が可能です。
合否は試験直後、パソコン画面に表示されます。受験回数2回を選択した方は、1回目が不合格の場合、もう一度試験を予約して、受験することができます。

一次試験は、試験が範囲広く類似問題が多く出題されるため、
・暗記ではなく内容や背景を理解すること
・試験に出題される範囲に絞って勉強すること
が大切です。
二次試験の概要
- 試験日程:10月中旬の平日
- 試験方式:テイスティング試験(マークシート方式)
- 試験内容:50分、外観・香り・味わいを選択
- 出題範囲:ワイン4種+その他1種
二次試験は一次試験とは異なり、実際にワインをテイスティングし、それらを正しく評価する能力が求められる試験です。ワインの外観、香り、味わいの分析が重要であり、論理的な判断力を使って試験に臨む必要があります。
試験では白ワイン2種類、赤ワイン2種類が出題され、各ワインに対し、100以上の選択肢の中から約40個の特徴を選択する問題形式になります。
また他に1種類のブランデーやリキュールに関する問題も出題され、5つの銘柄名から1つを選択するという問題も用意されています。
試験会場は、お住まいの地域ごとにソムリエ協会が指定した会場で行います。
合否は試験から約2週間後、ソムリエ協会のホームページで公開されます。

二次試験対策は、正しいテイスティングフォームを身につけ、正しい順番で比較テイスティングを行うことが重要ですよ。
ワインエキスパートの合格率と難易度
ワインエキスパート資格の合格率は他の資格試験の中でも合格が難しい試験と言われることがあります。
- 一次試験:合格率は約30%(正答率7割程度)
- 二次試験:合格率は約75%(正答率7割程度)
上記の合格率から、一次試験の段階で約3分の1の受験者しか合格できない結果となっています。そのため、第一関門を突破できるかが資格取得を目指す上で非常に重要なものだとわかります。
そんなワインエキスパート資格試験ですが、毎年受験される方は3,200人程度で、うち合格者は毎年1,200人程度になっています。
【2025年最新版】ワインエキスパート試験の日程
2025年度のワインエキスパート試験の開催日程は以下のスケジュールになります。
開催日程
一次試験:2025年7月15日(火)〜8月26日(火)
二次試験:2025年10月6日(月)
出願受付期間は2025年3月3日(月)10時〜7月10日(木)17時59分までです。
詳しくは一般社団法人日本ソムリエ協会の公式サイトをご覧ください。
出願受付期間に間に合うよう、余裕を持った出願準備を進めることをおすすめします。
ワインエキスパート資格を取得する4つのメリット

ワインエキスパート資格を取得することで得られるメリットは、単なる知識の習得を超えた、深い学びと貴重な体験につながります。以下にその具体的な魅力をご紹介します。
ワインを通じて世界の歴史や文化を深く知ることができる
ワインを学ぶと、
「このワインは、昔こんな人たちが育てていたんだ」
「この地域の風土だから、こんな味になるんだ!」
そんな発見が次々と生まれます。
例えば、ヨーロッパでは国や地方ごとの歴史がワイン造りに深く関わっており、その背景を知るとなぜ特定の品種がその国で有名なのかを理解することができます。
ワインを通じて、世界の歴史や文化を深く学ぶことができるのもワインエキスパート資格を取得する大きな魅力のひとつです。
ワインを知ることで、食事や旅行がますます楽しくなる
ワインエキスパート資格を目指して学ぶうちに、学ぶうちに、「ブルゴーニュ地方のエポワス(チーズ)はこんな味で、ピノ・ノワールに合うように造られているんだ!」 といった発見が増えていきます。
その結果、レストランでは「この料理にあのワインを合わせてみたい」 とワクワクし、海外旅行では地元のワインと食文化をより深く楽しめるようになります。
「ワインが有名な地域なら、地元のチーズや肉料理も試してみよう!」
「ワイナリー巡りを旅のプランに入れて、特別な味わいを体験したい!」
といった期待が膨らみ、外食や旅がさらに楽しくなるのも、ワインエキスパート資格を通じてワインの知識量が増えたことによる新たな楽しみ方ができると言えるでしょう。
厳しい試験に合格した喜びを共有することで、一生の仲間ができる
ワインエキスパート試験は決して簡単に合格できる試験ではありません。
同じ試験を同じ年に受験し、合格を目指して努力を重ねた仲間たちとは、試験を乗り越えた達成感を共有することで、一生のワイン会仲間になったという方も多いです。
そのような経験を通じて、同じ趣味を持つ友達ができることも大きな魅力の一つと言えるでしょう。
ワインイベントや特別な体験が広がる
ワインエキスパート資格取得者として参加できるイベントや限定ツアーなど、資格を持つからこそ得られる体験がたくさんあります。
ワイナリー訪問やプロ向けセミナーで、生産者の熱意に触れたり、同じ趣味を持つ人々と交流する機会が増えるのも、この資格ならではのメリットです。
ワインエキスパートを取得するのにかかる費用

ワインエキスパートを取得するにあたって、事前に把握しておくべき費用は大きく3つあります。
- 資格取得のための受験費用
- 合格に向けて勉強する学習費用
- 合格後にソムリエ協会に支払う認定登録料
受験1つとっても様々な費用が発生するので、ワインエキスパートを目指される場合は金銭的なコスト感もしっかり把握した上で受講しましょう。
ワインエキスパートの受験にかかる費用
一次試験から受験される場合 | 一般(非会員) | 会員 | |
受験回数 | 1回受験 | 32,900円 | 23,700円 |
2回受験 | 37,800円 | 28,600円 |
※受験費用にはソムリエ教本(Book版および電子版)が含まれています。
まず最初に一次試験の受験料は、試験に挑戦する回数によって異なります。
受験回数が1回の場合は税込32,900円、2回受験する場合は税込37,800円が発生します。受講回数に関係なく、申し込み後は試験範囲となるソムリエ教本が自宅に郵送されます。
また、ソムリエ協会会員にも同時に申し込むと受験費用の割引を受けることができます。会員申し込みには入会費と年会費がかかりますが、月1回の会報誌郵送と、ソムリエ協会主催のセミナーにほぼ無料で参加することができます。
※ソムリエ協会会員の特典について詳しくはこちらをご覧ください。
ワインエキスパートの勉強にかかる費用
ワインエキスパートの勉強にかかる費用は独学かワインスクールに通うかで異なります。
独学の場合 | ワインスクールに通った場合 | |
一次試験 | 約1万円 (参考書代+問題集) | 10~15万円 (講座の受講料) |
二次試験 | 6~12万円 (ワインボトル20-40種類) | 10万円 (実践的なテイスティング講座) |
独学の場合
一次試験対策は参考書代が5,000円程度と、問題集の購入費用が5,000円程度かかります。
二次試験対策は、平均3,000円程度のワインボトルを20-40種類程度購入し飲み比べを行うため、6〜12万円程度の費用がかかります。ワインはオンラインのワインスクールなどで試験本番同様のテイスティングシートと模範解答がついているものを購入しましょう。
ワインボトルで購入すると量が多く費用も高くなってしまうため、ワインバーに行ったり小瓶ワインのセットを購入することで、費用を抑える工夫も可能になります。
ワインスクールに通学する場合
講座の受講料は一次試験対策で約10~15万円程度、二次試験対策は10万円程度で受講ができます。そのため、ワインスクールに通う場合、合計20~25万円と高額な学習費用がかかってくることはしっかり理解しておきましょう。
しかし、ワインエキスパート資格は難関な試験であるが故にワインスクールに通って合格を目指す方が多いのも特徴です。
また試験対策を進めていく中で不明点や理解に至らなかった点などはすぐに講師の方に質問して解消することができるものワインスクールに通う利点でもあります。
ワインエキスパートの認定にかかる費用
二次試験に合格後、ソムリエ協会に認定登録料20,950円を納めることで、ワインエキスパートに認定されます。認定されると、ブドウ型のワインエキスパートバッジと認定証がご自宅へ郵送されます。
努力した学びの証が、ソムリエと同じブドウバッジという形で手に入ることも、ワインエキスパートの魅力の1つです。

さらに詳しく費用について知りたい方は「ワインエキスパート試験にかかる費用」の記事を参考にしてください。
試験に合格するにはワインスクール?それとも独学?
ワインエキスパート資格取得を狙う方がまず初めに悩むのが、学習方法です。試験に合格するための勉強法には独学で学ぶ方法とワインスクールに通って合格を目指す方法の2つがあり、毎年多くの受験生の頭を悩ませています。
ワインの勉強を開始する前に、それぞれの違いを十分理解した上で自分に合った学習方法を選択するようにしましょう。
項目 | 独学 | ワインスクール |
---|---|---|
費用 | 約10万円前後 (テキスト・問題集・練習代) | 約20万円以上 (受講料・教材費・試験料) |
学習計画 | ・自分で計画を立てる必要あり ・自由度が高い | ・スクールが計画を提供 ・スケジュールに沿って進行 |
テイスティング | ・自分でワイン購入&練習を行う ・コストや時間がかかる | ・テイスティング講座あり ・指導と実践的な練習が可能 |
サポート | ・サポートが限られる ・自己管理が求められる | ・講師や仲間からのサポートあり ・質問も迅速に対応 |
モチベーション維持 | ・自己管理が必要 ・独力で維持する必要あり | ・週に一度の授業や仲間と交流 ・モチベーションを維持しやすい |
合格までの効率 | ・自分のペースで学べる ・試験合格に時間がかかる可能性あり | ・計画的に学べる ・効率よく合格を目指せる |
独学でのワインエキスパート試験合格は可能!
合格難易度が高いワインエキスパート試験ですが、スクールに通わず費用を抑えるために独学で合格はできるのか、多くの受講生が一度は思ったことがあるのではないでしょうか。
結論として、独学での合格は可能です。
筆記の一次試験は900ページに及ぶソムリエ教本から出題されます。今の世の中には試験対策に役立つYouTube動画やわかりやすい参考書で理解を深めることが容易なため、それらを活用しながら問題集を繰り返し解くことで、十分独学で合格を狙うことができます。
- 杉山明日香先生著 『受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座』
- ホームワインアカデミー(5,000問)
- ヴィノテラス(4,000問)
- ワイン受験.com(20,000問)
しかし、テイスティングを行う二次試験に関しては、正しいテイスティングフォームを身につけ、複数のワインを比較しながらテイスティングを行う必要があります。

独学で二次試験に合格することは不可能ではありませんが、5,000人の合格者を導いた私の経験からすると、非効率な学習になりやすいため、あまりおすすめできません。
ワインスクールに通うと効率よく学習ができる
一次試験対策では、独学の場合まず900ページのソムリエ教本を読み込む必要があります。
ワインスクールでは動画講義を活用することで、ワインの造り方や歴史、ブドウ品種などを「なぜそうなるのか?」といった背景から理解しやすくなります。
また、ワインエキスパート試験は過去問の類似問題が多く出題されるため、内容をしっかり理解しているかどうかが合格のカギとなります。 ワインスクールでは、豊富な過去問をアプリで手軽に演習でき、進捗状況も管理しやすいため、効率的に学習を進められます。
二次試験対策では、正しいテイスティングフォームを身につけることが重要です。
酸味やタンニン(渋み)の強弱は、正しい飲み方を知らないと正確に判断できません。ワインスクールでは、試験に出やすいワインを最適な順番で比較テイスティングでき、試験同様に銘柄を伏せたワインが自宅に届くため、本番さながらの練習が可能です。
このように、ワインスクールなら独学では難しい内容に対して最適な勉強環境が整っているため、合格者の多くがワインスクールを活用しているのも納得の理由です。

特に一次試験は試験範囲が広いため、早めに勉強に取り掛かることが何よりも大切です。
ワインエキスパート資格を検討している方は、ホームワインアカデミーなどのワインスクールをまずはみて検討してみましょう。
まとめ
ワインエキスパート資格を取得することで、単なる知識以上の豊かな体験が日常に広がります。
- 世界の歴史や文化を知ってなるほどと思える瞬間が増える
- 外食や旅行がよりワクワクしたものになる
- 合格を分かち合った仲間との乾杯がいつまでも記憶に残る
- 特別なイベントに足を運ぶ楽しみが加わる
などワインという一杯の先には無限の可能性があります。
試験勉強は決して楽な道ではありませんが、その努力は必ずあなたの世界を広げてくれるはずです。ぜひ自分らしいスタイルで学びを深め、ワインエキスパート資格にチャレンジしてみてください。
ホームワインアカデミーは皆さまのチャレンジを応援しています!
